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腎盂腎炎(じんうじんえん)

腎盂腎炎とは

腎盂腎炎とは、膀胱から細菌が逆流することによって引き起こされる、腎盂および腎臓の感染症のことをいいます。適切なタイミングで、適切な治療(抗生剤の投与、補液)を行わなければ、細菌が血液中に侵入し、いわゆる敗血症と呼ばれる生命をも脅かす状態になります。

症状

発熱

時に40度近くになる発熱を認めます。

側腹部痛

感染を起こしている腎臓の側の腹部から腰部に痛みが生じます。

頻尿

膀胱尿道炎を原因とするので、頻尿となります。

膿尿

感染した菌による膿が尿に混じ、膿尿となります。

血尿

感染によって尿路から出血し、血尿となります。

原因

典型的な腎盂腎炎は、膀胱に感染した細菌が、腎臓へ尿感から上行することによって起きます。ごくまれに、体の他の部位での感染が、血流で細菌を腎臓まで運ばれ腎盂腎炎となることがあります。

危険因子

女性

女性は男性より腎盂腎炎になる頻度が高いことが知られています。その理由は、女性は男性に比べ、尿道が短いため細菌が膀胱内に侵入しやすいことと、女性の尿道は膣や肛門に近接していることが挙げられます。

尿路の閉塞

前立腺肥大症や尿路結石などで、尿路の閉塞のため尿流の低下がある場合は、腎盂腎炎になりやすいことが分かっています。

免疫力の低下

癌や糖尿病、その他免疫力の低下する病気では、感染に弱くなるため腎盂腎炎にかかりやすくなります。また臓器移植後やある種の免疫疾患で、免疫抑制剤を内服している場合も、免疫力の低下から腎盂腎炎の頻度が高くなります。

神経因性膀胱

神経障害によって膀胱の知覚(尿意)や排尿に障害が生じた状態を、神経因性膀胱といい、この場合、残尿が多いため膀胱の慢性感染となりやすく、次いでは腎盂腎炎を惹起しやすくなります。

膀胱留置カテーテル

特に長期間膀胱留置カテーテルを使用することによって、尿路感染が起きやすくなり、不適切な管理では腎盂腎炎を引き起こす場合があります。

膀胱尿管逆流症

膀胱尿管逆流症:先天的に膀胱の尿が尿管から腎に逆流する場合、腎盂腎炎になりやすいです。詳しくは膀胱尿管逆流症を参照してみてください。

合併症

腎盂腎炎を適切に治療しない場合、以下の合併症が引き起こされます。

腎機能障害

腎臓の感染症によって、腎臓にダメージがおこり腎臓の機能が低下します。たびたび腎盂腎炎を繰り返すと、腎不全となり透析が必要となる場合もあります。

敗血症、菌血症

腎臓は血液から老廃物を濾過し排泄する臓器です。そのため腎臓には豊富に血管が存在するため、重症の腎盂腎炎では細菌が血液に侵入し、敗血症、菌血症と呼ばれる危険な状態になります。

検査

尿検査

尿中に感染の証拠となる白血球や赤血球を認めます。

尿培養

尿中の細菌を同定します。

血液検査

感染症のため異常となる白血球やCRPが高値になります。

画像診断

CTやエコー検査で感染した腎の腫大や腎周囲の脂肪の異常を認めます。

治療

腎盂腎炎の治療は、まず抗生剤の投与です。軽症の腎盂腎炎であれば、外来通院で点滴による抗生剤投与、また内服の抗生剤等で治癒します。しかし、高熱が持続する重症の腎盂腎炎の場合、入院して治療が必要となります。

また、腎盂腎炎の原因として、前述した尿路結石や前立腺肥大症などによる尿路閉塞を伴う場合は、尿路の閉塞をカテーテルなどで解除し、体外へ膿の排除をしなければ治癒しません。

膀胱尿管逆流症などが存在し、たびたび腎盂腎炎を繰り返す場合、腎盂腎炎の発症の防止のため、手術的に膀胱尿管逆流症を治療しなければいけない場合もあります。

予防

水分摂取

適切な量の水分を摂取することによって、尿量を確保し、侵入した細菌を体外へ洗い流すことが大切です。

排尿を我慢しない

排尿を我慢することによって、侵入した細菌が膀胱内で繁殖しやすくなり膀胱炎を引き起こしやすくなります。そのため長時間、我慢をせず排尿することを心がける必要があります。

性行為の後の排尿

性行為の後は膀胱内に細菌が侵入している確率が高く、そのため性行為の後排尿することによって、膀胱炎を予防することができます。

以上、腎盂腎炎について概説しました。腎盂腎炎は風邪とは違い、抗生剤投与なしで自然に治癒することはないので、前述した症状が認められる場合は、医療機関を受診して適切な治療を受けるようにしてください。治療のタイミングが遅れると、治療に時間がかかるだけではなく、腎臓のダメージも大きくなるので、腎機能の面からも適切な治療が肝要となります。

<コラム担当> 医師 新村浩明