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大腸がん(検診・診断編)すこやかコラム

大腸がんとは?

大腸がんは、大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するがんです。男性はおよそ11人に1人、女性はおよそ13人に1人が、一生のうちに大腸がんと診断されています。大腸がんにかかる方は増加傾向にあり、がんの部位別罹患数は、男性で第3位、女性で第2位となっています。また、がんによる死亡者数としても、男性で第3位、女性で第1位で、2018年現在、男女を合わせると第2位となっています。

環境要因(生活習慣など)や遺伝要因などが大腸がんの発生には関与することが知られています。そのほかにも日本は検診受診率が低いことが大腸がんの死亡率を上昇させている要因の一つと指摘されています。大腸がんは早期に発見すれば非常に予後がよいがんですが、発見が遅れ進行した状態で見つかると致死率が高いがんでもあります。早期に発見し、適切な治療を受けることがとても大切です。

大腸がんの症状

早期の大腸がんでは、便潜血検査が陽性になることはあっても、自覚症状は何もないことがほとんどです。その一方で、進行大腸がんでは腫瘍による局所の症状が出ることが知られています。
過去の報告によれば、進行大腸がんの症状として最も多いものは便習慣の変化でした。続いて、血便または下血、腹部または肛門近くの腫瘤触知、原因不明の貧血(血液中の赤血球濃度の低下)でした。特に下血または血便と腹部の腫瘤を触れる症状がある場合には大腸がんの可能性が一気に高くなりますのでもしそのような症状がある方は早めに医療機関に受診してください。

大腸がんのリスクファクター(危険因子)

大腸がんにはいくつかのリスクファクター(危険因子)が存在します。リスクファクターとしては、主には遺伝や疾患に依存する要因と環境要因(生活習慣等)とに大別されます。
遺伝的要因の代表的なものとしては、腺腫性ポリポーシス症候群やリンチ症候群、嚢胞性線維症などの遺伝性疾患が挙げられ、こういった要因を持つ方では大腸がんのリスク大きく上昇するため、一般の方よりも注意深い大腸がんスクリーニングが推奨されています。
その他、特定の疾患を有する方でもがん発症のリスクが上がる可能性があり注意が必要です。例えば、本人や家族で大腸ポリープの治療歴がある方や潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、骨盤への放射線照射治療などは過去の研究から大腸がんを発症するリスクが上昇することが指摘されているため、注意深い大腸がんスクリーニングが推奨されています。

先端肥大症や腎移植後などの因子をお持ちの方は、上記の遺伝的要因や疾患を持つ方ほどではありませんが、大腸がんの発症リスクが上昇する可能性があります。そのため、現在は注意深い大腸がんスクリーニングを推奨とまではいきませんが、その次点という扱いがされています。

次に、注意深い大腸がんスクリーニングが推奨はされていませんが、大腸がん発症リスクリスクを上昇させることがわかっている要因としては、

・肥満
・糖尿病およびインスリン抵抗性
・赤肉(牛肉と豚肉)および加工肉摂取
・喫煙
・飲酒
・アンドロゲン抑制療法(主に前立腺がん治療に使われる)
・胆嚢摘出術

などが挙げられます。これらの因子は主に生活習慣に起因するものですので、お持ちの方は自身の生活習慣の改善が大腸がんリスクの低下につながる可能性があります。一方で、そのような因子をお持ちの方について、特に通常以上の大腸がん検診が推奨はされていません。しかし、通常通りに一般の方に対して推奨されている検診を受けることは大変重要です。

大腸がんの防御因子

過去の研究からでは、多くの要因が大腸がんのリスク低下と関連していることが報告されています。これらの要因には、定期的な身体活動、様々な食事要因(繊維、いくつかのビタミン、ニンニク・魚・コーヒーの摂取)、アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の定期的な使用、閉経後の女性におけるホルモン補充療法などがあります。その一方で現在までのところ、これらの要因のいずれも、大腸がん検診の推奨度を左右する要因としては用いられていません。

大腸がん検診

大腸がん検診が40歳以上の全ての男女を対象として行われています。日本で用いられている検診の方法は、便潜血検査です。この方法は2日分の便を提出し、便の中に血液が混じっていないかを調べるものです。便潜血検査が陽性になった場合には全大腸カメラを行い、出血の原因を特定します。便潜血検査は、科学的に大腸がんの死亡率を低下させることがわかっている有用な方法ですが、出血していない大腸がんは見つけられないこと(偽陰性)や、痔がある人などでは必ず陽性になってしまう(偽陽性)などのいくつかの問題点も有しています。

一方で、米国予防医学専門委員会(USPSTF)は、この便潜血検査に加えて、最近まで50歳以上の男女に対して5年ごとの全大腸カメラを推奨していましたが、2021年に改訂がなされ、45歳以上に男女に対して、10年ごとの全大腸カメラと5年ごとのCTコロノスコピーが推奨されるようになりました。日本の検診と異なる点は、症状がなくても大腸カメラが推奨されていることですが、これらも非常にエビデンス(科学的根拠)が高いため、日本でも今後検診方法が変更される可能性は十分にあります。

大腸がんの診断

大腸がんの診断は原則的には大腸カメラと病理検査で行われます。大腸カメラで病変を確認し、生検で腫瘍の一部をつまみ、病理検査で組織の状態を確認し、がん細胞が認められれば大腸がんと診断されます。大腸がんの確定診断が付いた後は、造影CTや大腸バリウム検査を行い、大腸がんの病期(ステージ)が決定されます。病期に基づいて、その後の治療方針を決定します。

最後に

ときわ会常磐病院では便潜血検査が陽性になった後の二次検診(全大腸カメラ)を始め、CTコロノスコピーも実施可能です。その後の治療も基本的には当院で全て行うことができ、腹腔鏡手術や化学療法など最先端の治療も積極的に行なっています。大腸がんに関して、気になることがある場合には当院外科の外来までお気軽にご連絡ください。

コラム担当医師:ときわ会常磐病院 外科 澤野豊明