大切な人と
大切な命を守るために

当院 婦人科では婦人科疾患全般に関して診療をおこなっておりますが、とくに婦人科癌患者様、癌の疑いのある患者様を優先的に治療するよう努めております。治療内容は基本的に各々のガイドライン(子宮頸がん治療ガイドライン、子宮体がん治療ガイドライン、卵巣がん治療ガイドライン)に準じて選択しますが、患者様の全身状態に応じて、最適と考えられる治療法を提示する場合もあります。当院は総合病院であるため、他診療科と協力しながらベストな医療がご提供できるように心がけています。
以下、「子宮頸がん検診」「子宮頸部腫瘍」「子宮体部腫瘍」「卵巣腫瘍」「子宮筋腫」「子宮内膜症」に項目を分けて診療内容をご説明します。

SECTION01

子宮頸がん検診の重要性

下記の年代別の子宮頸がん罹患率(発症率)をみてもわかるように、子宮頸がんは若い年齢層に多い「がん」です。通常、「がん」は高齢になればなるほど発症率が増加します。しかしながら子宮頸がんでは20代からすでに増え始め、妊娠・出産・育児(子育て)など女性にとってもまた家族にとっても大変重要な時期に多く発症する傾向があります。一方、子宮頸がんは予防できる時代になりました。HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)が開発され、これを接種することで7割方の子宮頸がんは予防できるであろうと考えられています。

また、「子宮頸がん検診」は数ある「がん検診」の中でも最も精度の優れた検診です。「がん」になる前の「異形成」の段階で発見されれば子宮を摘出する必要はありません。手術も短時間で終わり、場合によっては入院の必要性もない手術法もあります。しかしながら、いわき市民の「子宮頸がん検診」受診率はわずか30%です。日本全国の平均も30%と言われており、欧米先進国の受診率70%以上に比べ、「子宮頸がん検診」の重要性を認識していない日本女性があまりにも多いことは残念です。子宮頸がんは「予防」「検診」で十分に撲滅可能な「がん」です。少しの勇気をもって、婦人科クリニックを受診しましょう!

SECTION02

子宮頸部腫瘍について

細胞診 日母分類 クラスⅢa クラスⅢb クラスⅣ クラスⅤ
ベセスダシステム LSIL HSIL SCC
組織診 CIN分類 CIN1 CIN2 CIN3
子宮頸癌取扱規約分類 軽度異形成 中等度異形成 高度異形成 上皮内癌 微小浸潤癌

※上図イラストは左から順に、子宮頸癌 Ib期(子宮頸部に限局)、IIb期(癌浸潤が子宮頸部を越えています。)、IIIb期(癌浸潤が骨盤壁に達します。)を示しています。

ヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)の感染が発生要因のひとつと言われています。20代、30代の女性に比較的多く発症します。前がん状態である子宮頸部高度異形成や上皮内癌では妊孕性温存が可能で、妊孕性温存手術をfirst choiceに治療にあたっております。当院では子宮頸部円錐切除術における出血を軽減するため超音波メスやレーザー・メスを主に用いています。子宮頸部軽度異形成~中等度異形成に関しては半数程度の方が経過観察中に自然治癒することから3~4ヶ月ごとの定期的な検査あるいは子宮頸部レーザー蒸散術(短期入院手術)をお勧めします。また、一部の子宮頸部高度異形成・上皮内癌患者様に関しては子宮頸部レーザー蒸散術を適応する場合があります(生殖可能年齢の方)。いずれに関してもよくご相談のうえ治療法を選択してください。  子宮頸癌(浸潤癌)では浸潤程度に応じて準広汎子宮全摘出術、広汎子宮全摘出術、超広汎子宮全摘出術、広汎性子宮頸部摘出術(妊孕性温存手術)、放射線治療(抗がん剤併用)などを行います。 当院では「子宮頸癌治療ガイドライン 2011年版 日本婦人科腫瘍学会編(金原出版)」に基づいて治療方針をご説明し、ご納得いただける治療が提供できるよう努めています。

2016年4月

SECTION03

子宮体部腫瘍について

※イラスト上の緑色で示されている部分がリンパ節です。

※正中図(体癌I期、子宮体部に癌が限局)、右図(体癌II期、癌が子宮頸部に及ぶ)。

未産婦、閉経前後、閉経以降の方に比較的多く発症します。ライフスタイル、食生活の欧米化に伴って、近年増加傾向にあります。子宮内膜の細胞診でスクリーニングし、組織診で確定診断をします。
 子宮内膜増殖症という子宮内膜が非常に厚みを帯びる疾患があります。子宮体癌との関係はいまだ不明ですが、異型を伴わない子宮内膜増殖症では定期的な検査で経過観察します。異型子宮内膜増殖症では子宮体癌を併発している場合がありますので癌に準じた治療が必要です。
 子宮体癌は、組織型(癌の形態)や筋層浸潤の程度に応じて手術術式を決めます。また、再発危険因子を有する病状である場合には術後補助療法として抗がん剤化学療法を主に行っています。
 子宮体がんの治療は、手術療法が中心となります。ただし、病変が全身に及んでいる場合には抗がん剤療法や疼痛軽減などを目的とした放射線療法を行うこともあります。
 手術は、子宮全摘出、卵巣・卵管摘出、リンパ節郭清(骨盤内リンパ節や傍大動脈リンパ節)が標準の術式です。摘出した子宮、卵巣、リンパ節を顕微鏡で検査し病巣の拡がりを確認し以下に述べる危険因子があれば原則として追加療法(抗がん剤療法など)を行ないます。危険因子としては、高度の脈管侵襲(子宮標本で、血管やリンパ管にがん細胞が入り込んでいるのが確認される状態)、1/2をこえる筋層浸潤、頸管浸潤、子宮外病変(リンパ節転移や卵巣転移、腹膜播種)などです。当院では「子宮体がん治療ガイドライン 2013年版 日本婦人科腫瘍学会編(金原出版)」に基づいて治療方針をご説明し、ご納得いただける治療が提供できるよう努めています。

2016年4月

SECTION04

卵巣腫瘍について

※左図は膀胱・子宮・卵巣・直腸の位置関係を模式図で示しています。右図は、実際に開腹した際の腹腔内所見です。卵巣癌が転移しやすい大網は胃からすだれのように垂れ下がっている膜状の組織です(図の黄色の網状組織)。

 卵巣は卵子(生命のおおもと)を作る場所であるため、多種多様な組織型の腫瘍が発生します。良性腫瘍であることが多いですが、その確定診断は手術で摘出し顕微鏡的診断(病理組織診断)に提出しないことにはつけられません。そうはいっても、すべての卵巣腫瘍を摘出していては多くの女性が大事な卵巣を失くしてしまうことになってしまいますから、超音波検査や血液検査、場合によってはCT、MRI検査などを追加して慎重に手術適応を決めます。
 卵巣癌であった場合には、癌進行期にもよりますが、手術に加え、抗がん剤化学療法を併用することが多いです。
 卵巣癌の標準的治療方針として全身状態が許す限り、先ず手術を行います。卵巣癌の最終(確定)診断は、摘出腫瘍の病理組織診断によります。卵巣は腹腔内に存在するため、外来にて手術前に一部を切除し病理組織検査に提出することが困難です。したがって手術中に病理組織診断を行うこと(術中迅速病理組織診断)が必要です。
 卵巣癌では、子宮全摘出+両側卵巣・卵管摘出+大網切除±(骨盤内リンパ節郭清+傍大動脈リンパ節郭清)が基本術式といわれています。女性生殖器である子宮と卵巣を摘出することで主病巣を摘出するとともに、卵巣癌が転移・進展しやすい大網やリンパ節、腹腔内転移巣を摘出します。この術式でがんの根治性を高めるばかりでなく、病巣の広がりを正確に把握することで、その後の治療が適切に行われることになります。
 多くの卵巣癌は診断時にすでに腹腔内に広く転移しています。例え全ての癌病巣が摘出されなくとも、出来るだけ体内に残る癌病巣を少なくすることで、その後の抗がん剤の効果が高まります。多くの報告でも残存病巣の最大径2cm以下の群は2cm以上の群に比して予後良好と言われています。したがって卵巣癌の初回手術は前述の標準術式が行われることが大切であり、不十分な手術は、その後の抗がん剤治療の効果を満足のいくものにできない可能性があります。悪性を疑う卵巣腫瘍の手術にあたっては、術中迅速病理診断が行えること、癌根治術式を行う知識と技術を有したスタッフがいること、外科医や泌尿器科医の協力が得られやすいこと、が肝要です。
 当院では「卵巣がん治療ガイドライン 2015年版 日本婦人科腫瘍学会編(金原出版)」に基づいて治療方針をご説明し、ご納得いただける治療が提供できるよう努めています。

2016年4月

SECTION05

子宮筋腫について

女性において最もなじみのある疾患かもしれません。筋腫ができた場所、大きさ、発症年齢に応じて治療法を患者様と一緒に考えていきます。当院での治療法はすべて保険診療の範囲内です。手術療法(子宮全摘出術、筋腫核出術)、偽閉経療法(GnRH製剤を使用)、経過観察、です。
2014年の最大の話題はモルセレーター(子宮や筋腫を細分化し、腹腔内から組織を腹腔外へトロッカーを経由して回収する機器)の製造販売停止でした。アメリカFDAの勧告に基づき製造販売メーカーが製造中止を決定したことで腹腔鏡下手術の手法も変化を余儀なくされました。アメリカFDAの勧告の元となった論文によると、27人/1万人の割合で子宮体癌、7人/1万人の割合で婦人科がん(子宮体癌以外)、11人/1万人の割合で悪性度不明子宮平滑筋腫瘍がモルセレーター使用手術を受けた患者さんに見つかった、とのことです。モルセレーター機器の原理上、悪性腫瘍細胞が腹腔内にまき散らされた可能性は高く、安全性において問題があると報じられました。国内の施設では術前に十分精査することでこれまでモルセレーター使用手術患者さんに悪性腫瘍がみつかったケースはごく少数と報告されていますが、今後も悪性腫瘍がみつかることはないという保証はできないため、モルセレーターを必要とする手術に関しては慎重に判断したいと思います。また、術前に腫瘍(筋腫含む)を十分精査し、悪性の可能性を極力排除した状況で子宮温存手術を行うよう努めています。

2016年4月

SECTION06

子宮内膜症について

子宮内膜症は病理組織学的には良性疾患ですが、全身の様々な場所に転移することがあります。発症した場所によって、症状も異なる多彩な病気です。また、月経困難症の原因であったり、月経時以外にも不定期に下腹部痛をきたしたりすることもあります。基本的にホルモン依存性疾患ですので、閉経すると症状はなくなります。
当院では、保存的治療を主として行っています。
・ルナベルULD、ルナベルLD(低容量ピル:保険適応)
・ディナゲスト(子宮内膜症治療用ホルモン剤:保険適応)
・GnRH製剤(偽閉経療法:保険適応)
上記のような薬剤治療のほか、卵巣に子宮内膜症病変が発生し腫瘍を形成した場合には手術療法(開腹手術、腹腔鏡下手術)も行っております。

2016年4月

※上図は子宮筋層に発症した内膜症である子宮腺筋症を表しています。

SECTION07

手術実績

手術対象疾患名

2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
子宮筋腫・子宮腺筋症 16 24 36 24 29
CIN2,CIN3,CIS 15 20 24 14 25
子宮脱・膀胱瘤 3 8 6 5 5
子宮頸癌・子宮体癌 3 4 7 4 7
卵巣腫瘍(良性) 11 23 30 34 20
その他 2 14 11 9 20
合計 50 93 114 90 106

術式別

2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
腹腔鏡下腟式子宮全摘出術(LAVH) 11 9 13 12 16
(開腹)子宮全摘出術(TAH) 6 12 13 14 8
子宮頸部CO2レーザー蒸散術
子宮頸部YAGレーザー円錐切除術
9 20 20 12 19
DaVinci支援腹腔鏡下子宮全摘出術 0 3 5 4 1
DaVinci支援腹腔鏡下仙骨腟固定術
(腹腔鏡下仙骨腟固定術を含む)
- - - - 5
子宮悪性腫瘍手術 3 1 7 3 2
腹腔鏡下卵巣腫瘍摘出術(TLC, TLA) 10 23 24 25 16
子宮鏡下筋腫摘出術(TCR-M)
子宮鏡下内膜ポリープ切除術(TCR-P)
1 6 6 2 13
腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術(LAM) 2 2 5 - 4
その他 5 11 19 11 14
合計 47 87 112 83 98

SECTION08

担当医師紹介

玉田 裕

玉田 裕(たまだ ゆたか)

経歴

専門領域:婦人科腫瘍

平成6年 慶應義塾大学医学部卒
平成13年 慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程卒

保有資格等

  • 日本婦人科腫瘍学会 婦人科腫瘍専門医・指導医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医
  • 日本臨床細胞学会 細胞診専門医
  • 医学博士
  • がん等の診療に関わる医師等に対する緩和ケア研修会終了
  • 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構 E-Learningセミナー修了

SECTION09

診療予定表

  月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
9:00~12:00 外来 外来 外来 手術 外来
13:00~16:00 特診 特診 特診 手術 特診

※診療は予約制です。電話予約も承っております。TEL:0246-81-5522