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耳と補聴器について

2012年09月06日

今回は、あの伝説のコラム「介護予防の視点」に寄稿するはずだった(笑)、幻の記事をアップいたします!
http://www.tokiwa.or.jp/welfare/onahama/column/


皆さんこんにちは。言語聴覚士の森弓子と申します。
今回は耳と補聴器についてお話ししたいと思います。

耳から聞こえる音は生活するうえで大切な情報です。聞こえないと会話が出来ませんし、音によって危険を回避することも出来ません。ところが困ったことに年齢とともに耳が聞こえにくくなってきます。これを「老人性難聴」といいますがこのときに活躍するのが補聴器です。


まずは「耳が聞こえる」までのメカニズムです。

私達にとって耳が聞こえるのは当たり前の事かもしれません。ですが、聞こえるまでにはいくつかの過程を通過します。まず私たちが聞こえている「音」ですが、もともとは空気の「揺れ」であり「振動」です。
「音」は耳の穴から「振動」となって鼓膜に伝わります。鼓膜には「耳小骨」という体の中で最も小さいといわれる骨がついており、鼓膜から耳小骨に振動が伝わります。さらに耳小骨は「蝸牛」に付いていて「蝸牛」の中にあるセンサーに振動が伝わる事によって高音、低音の判別が行われます。ここからさらに、神経を伝わり脳に到達する事によって私たちが普段よく聞いている家族の声や音楽として「聞こえる」ようになるのです。

さて、「聞こえる」までのお話をしましたが「老人性難聴」は一体どこが悪くておこるのか?
答えは「全て」です。残念ながら年齢と共に体は衰えていきます。手足は動きにくくなり、目も見えなくなってきます。同じように耳も、たとえ鼓膜と耳小骨が元気でも、生まれた時から使い続けている蝸牛のセンサーと神経は磨り減り、やせ細っていきます。
つまり、鼓膜と耳小骨から蝸牛に振動が伝わってもセンサーが磨り減っていて音の判別がしっかりと出来ません。あやふやに判別された音はやせ細った神経を伝わるので脳までしっかりと伝わりにくくなってしまいます。こうして起きるのが「老人性難聴」です。


最近耳が聞こえない、という場合に活躍するのが「補聴器」です。耳掛けタイプから耳穴タイプ、目立たないものから種類も値段も様々異なります。
「補聴器」を持っていてもタンスの肥やしになっている、という人は珍しくありません。それは何故か。「うるさくて邪魔」だからです。

人間の耳は「カクテルパーティー効果」という便利な能力があります。周りで家族が喋っていてもテレビの音はちゃんと聞こえますよね?何故でしょう?それは無意識に聞きたい音を選択して聞いているからです。これが「カクテルパーティー効果」です。では同じ状況でマイクを通して聞いてみるとどうでしょうか。テレビの音も話し声も混ざってしまってテレビの音だけを聞くのは難しいはずです。補聴器はマイクと同じで音を大きくする道具です。ですから補聴器も同じようにすべての音が全部聞こえてきます。だから「うるさくて邪魔」なのです。さらにサイズが合っていないとピーピーと音がします。これを「ハウリング」といいますが、この音がなっていると耳の穴に補聴器がピッタリ合っていないというサインです。この音がうるさくて邪魔、と言う方もいらっしゃいます。


人間の体はとても高性能にできています。どんなに機械が高性能になっても人間と同じ能力を持つことは難しいでしょう。少しでも補聴器に違和感がある、聞こえにくい、うるさい、ピーピー音がなる、と言うときは耳鼻科や補聴器のお店に相談してください。

補聴器を上手に使うためには耳にぴったりとあっていること、補聴器に慣れる事が大切です。こまめに相談やメンテナンスを行い、長く補聴器を使ってみて下さい。よく聞こえる耳は家族とのコミュニケーションはもちろん、認知症の予防にも一役かっています。


皆さん、良く聞こえる耳で楽しい生活を送りましょう!




[参考・引用文献]
言語聴覚療法臨床マニュアル  協同医書出版書
言語聴覚障害学        新興医学出版社
補聴器フィッティングの考え方 診断と治療社

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