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すまいりすとすまいりすと

今月の「輝き!すまいりすと」Vol.7 2007年5月
佐藤和子(さとうかずこ)管理栄養士・病態栄養専門師 〜 患者さんとのきめこまかな二人三脚が、私たちの誇りです 〜

栄養環境を整える専門家

福島県北部にある国見町(くにみまち)出身。ときわ会には開院5年目に就職、それ以前も医療機関で栄養士としての仕事をしてきました。

いわき泌尿器科での仕事がスタートした頃、給食部門についてはまだヨチヨチ歩きといった第一印象。さらに改善できると感じました。平成7年以降は、献立や調理、洗浄、食材の発注など、それまで院内で行なっていた業務を外部委託に切りかえました。

管理栄養士は、バランスがとれた食生活についての指導をはじめとして、おひとりおひとりに合った栄養の管理を通じて、健康を維持改善していただくためのサポートが役割。栄養環境を整える専門家だと云えます。透析、一般外来、入院を問わず、患者さんに対する栄養指導をメインに取り組んでいます。

食事療法というのは、個々の医療機関や医師によって、それぞれの認識に温度差があるのですが、当会では、当時東京女子医科大学から毎週診療にお越しになっていた川口先生(現:透析センター長)の指揮のもとでの取り組みによって、保存期(透析導入前)の患者さんに対する腎不全治療に高い実績を持つようになりました。

「いわきニーレの会」

平成5年末、いわき市にある医療機関が連携して「いわきニーレの会」という患者さんの会を結成しました。この会は、低たんぱく食の食事療法で透析を遅延させるのを目的とし、病院の壁を取り外した画期的な会でした。指導は、腎臓病に精通したいわき地区の医療機関に勤務する栄養士があたりました。

 

「いわきニーレの会」では、献立の考案やその調理実習など、通常の勤務時間の範囲内では充分にやりきることが難しい内容についても、勉強会に参加しているそれぞれの医療機関の栄養士に協力してもらいながら、平成16年まで約10年間、その活動を継続しました。

 

患者さんにとってみれば、「自分を指導する栄養士は健常者」といった感覚がおありでも不思議ではありません。同じ立場の患者さん同士による情報交換やコミュニケーション、他施設と一緒になっての交流だからこその手応え、そして成果が得られたと思います。

 

注) 「ニーレ(niere):腎臓」

患者さんの顔がわかる栄養指導

患者さんに対する役割として、医師による動機付け、栄養士は患者さんの後ろに廻ってバックアップ。指導というと何かおこがましく響くのですが、私たち管理栄養士から患者さんおひとりおひとりの顔がわかる、そんな栄養指導でありたい続けたいと思います。

 

慢性腎不全の患者さんに対する食事療法というのは、その治療効果がデータにはっきりと示されます。栄養指導という入り口部分をきちんとすれば、出口部分である数値に出てくるんです。

 

医師から検査結果についての説明を受ける患者さんのみなさまは、食事療法という、ご自身の頑張りが個々のデータに現れてくるということを良く理解しておられます。

 

待合室でそれこそ80歳代といったご年配の患者同士が、「私のBUN(尿素窒素)はこれこれ、Cr(血清クレアチニン値)がいくら」といった会話をなさっていて、周囲の外来患者のみなさんが、「このおじいさんとおばあさん、なんでこんな専門用語知ってるんだろ?」といった光景もありました。

「これ、美味しいね」「それ、良いよね」

医学的に求められる要素と患者さんのご事情や嗜好との折り合い、その両方をバランスさせることはとても重要です。忙しい患者さんに、何品ものメニューをと云っても、実際にお料理するのは難しいものです。

 

そんな場合、例えばチャーハン。油、バラ肉やバラベーコンを使ってカロリーを増やすことによって、低たんぱくで高エネルギーのお食事が、フライパン調理一回でできあがります。

もの足りないとお感じであれば、マヨネーズを使った野菜サラダ。腎不全がすすんでいるケースだとカリウムの少ない材料を使ったメニュー、糖尿がなければ粉飴(甘くない砂糖のような食品)でカロリーを補うとか。

 

こういうやり方でと決めつけたりしなくても、患者さんから多くのヒントを学ぶことができますし、ご自身に合ったアイデアを教えてくださる。勉強会の場でも、「これ、美味しいね」「それ、良いよね」と、患者さんの間で様々な工夫が拡がっていきました。

忘れ得ぬケース

今から10数年前、小学1年生の女の子が来院なさいました。担当した看護師が「腎臓が悪いのでは」と直感し、すぐに採血を行なったところ、通常ならば15mg以下とされる尿素窒素の値が82mgとわかり、緊急入院。食事に含まれる微細な値も厳密にコントロールする個別管理の徹底を開始しました。

 

その結果、ごく短期間でデータが劇的に変わったのです。実際に調理を担当した現場のスタッフもびっくり、ご家族も「食事療法でこうなるんだ」ということを理解してくださいました。

 

そうした経緯で、その患者さんとのお付き合いが始まりました。学校給食は食べずに、お弁当の持参を続けた結果、高校生で透析導入。その後、腎移植をお受けになり、現在も通院なさっています。

この仕事の誇り

慢性腎不全の患者さんを中心として、栄養士という立場からの役割を発揮することができるというポジション。医師による的確な診断のもと、医療チームの一員として治療に参画するというミッション。

 

管理栄養士という仕事には、そうしたスペシャリストとしての存在価値・存在意義が与えられているのだと感じます。

 

患者さんの身になって、患者さんの生活そのものを大切にするという信念。患者さんとのきめこまかな二人三脚が、私たちの誇りです。

ときわ会いわき泌尿器科ならではの取り組みを、地域や全国のみなさんに広く知っていただけたら、そう思います。

 

うちのチームはここがすごい、いわきではきっと一番の粒揃い、どこに出しても恥ずかしくない能力を発揮するメンバーです。

自分たちの活動の意義を、様々な機会を捉えて拡げていきたい。そのためには、私たち管理栄養士を含めて、地域内外に向けた発信力を高めていくことが大切。

 

そして、もうひとつ。若いひとたちが育っていってくれること。そのための貢献にも力を注いでいきたいと思います。

ご馳走伝説!?

医療の一環としての栄養指導とは別に、お料理をして食べてもらうのが好き。ぜひ楽しみながら食べたい、ですね。

 

追記) カレーパン、シュークリーム、さらには絶品のピロシキなど、彼女の手作りグルメを体験したことのある院内スタッフの間には、「ご馳走伝説」との声も!