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すまいりすとすまいりすと

今月の「輝き!すまいりすと」Vol.9 2007年7月
川口洋(かわぐちひろし)医療法人 社団ときわ会 いわき泌尿器科 院長 〜 ときわ会いわき泌尿器科の看護師の優秀さは、当時も今も、私にとって心からの誇りです 〜

「ときわイズム」の萌芽

私が東京女子医科大学から派遣医師としてときわ会に通っていたころには、常盤理事長と石井教授(現:東邦大学泌尿器科)、そして私の3人しか診療医がいないという体制でした。透析と腎臓外来さらに病棟の診療を私が担当、本院であるいわき泌尿器科と泉中央クリニックの両方を掛け持ちで診療、それこそ昼食は移動中のタクシーの中でおにぎりを食べるのが精一杯といった慌しい日々でしたが、つらいとか嫌だとかと感じるようなことは一度もありませんでした。きっとそれは、看護師をはじめとするときわ会職員全員の一生懸命さ、熱くひたむきな姿勢によるところが多かったのだと思います。彼らは、患者のみなさまに対してはもちろんのこと、当時の私のように外部から診療に訪れる派遣医師に対しても、非常に優しく接してくれました。

これだけ気持ち良く働ける診療所は、東京を本拠地として働いていた私からすると実に驚きでした。ときわ会以外の施設での派遣診療の場合、ややもするとなんとなく時間が過ぎるということもあったのですが、ときわ会での仕事については、どんなに忙しい状況にあっても、自然と一生懸命に取り組んだのを覚えています。患者さま、職員そして派遣医師にいたるまで、ひととの絆を大切にするという常盤理事長の理念が、仕事をともにするすべての人間に浸透していたのだと思います。

私が大学を辞める際、教授から留学してはという話もあったのですが、迷うことなく、ときわ会で働きたいと思ったのは、理事長をはじめとするときわ会の職員の暖かさ、現在にまで脈々と受け継がれている「ときわイズム」に強く共鳴したからです。

腎臓移植の取り組み

いわき泌尿器科で私が力を注いで取り組んだことのひとつに、腎移植があります。院長として着任したその年に、診療所としてはわが国で2施設目となる腎臓移植を行ないました。その当時のいわき泌尿器科の規模では、万が一、失敗するようなことにでもなれば、腎移植を二度と実施できなくなるかもしれないといった危惧もありましたが、理事長は腎移植への取り組みをすべて私にまかせてくれました。平成9年10月、職員一丸の協力体制のもと、第1例目となる腎移植が成功。直近23例目の生体腎移植に至るまで、すべての例において成功実績を重ね続けています。

そうした成功要因のひとつは、当院の看護力の高さにあると私は考えています。移植の管理で重要なのは、きめ細やかな看護です。当時第1例目の移植を行なうにあたっては、それまで移植の経験を持っていない職員に対する教育から開始しました。新潟大学で実施される移植日に合わせ、主任クラス、手術担当の看護師を率いて、手術の見学および病棟での術前術後の看護に関する一週間の実習を行なったのです。そうした経験を数回積み重ねることによって、いわき泌尿器科移植看護マニュアルを完成させ、第1例目となる移植に挑戦することができたのです。今から振り返ってみると、診療所の看護師たちが弱音を吐くことなく、移植の実施に向けた密度の濃い準備を頑張ってくれたと思います。これも常盤理事長と佐久間看護師長(当時、現:財団法人竹林病院常務理事)の厳しい指導の賜物でした。ときわ会いわき泌尿器科の看護師の優秀さは、当時も今も、私にとって心からの誇りです。

診療所から病院へ

創立以来ときわ会が徹底し続けてきた地域密着医療の実践を通じて、受診くださる患者さまが増加すると同時に、医学の進歩や疾病構造の変化に対応して、より質の高い医療を提供していくためには、現在の施設ではやや手狭になってきました。具体的に私の担当する腎臓内科の領域でいえば、透析患者数が急激に増加する一方、糖尿病性腎症や長期透析患者の増加に伴なう合併症への対策、さらには腎移植医療の実践が迫られています。

そもそも透析医療とは、他の多くの透析施設に見られがちな、単なる標準的・画一的な透析をすればよいというようなものではなく、全人的ケアという観点に立ち、患者さま個々人のニーズに応じた透析医療の提供が不可欠です。言い換えれば、平面的ではなく立体的、高齢者から若い患者のみなさままで、幅広い年齢層のニーズに応じた手作りの透析治療、つまり多くの至適透析のメニュー提供が必要となっています。また透析を受けておられる患者さまには様々な合併症がつきもので、この点にどう対応するかが、患者さまの予後に直結します。そこでブラッドアクセス手術をはじめとして、合併症の内科治療や外科治療にはきめ細かい対応が必要なのです。さらには合併症の早期発見のために、最新の機器を駆使した定期的検査も不可欠となります。

最先端かつ最善の医療を地元のみなさまへ。そのご提供を一貫して目指す私どもときわ会としては、現在のいわき泌尿器科の施設内に充分な場所を確保することが困難なため、以前より頭を悩ませていました。しかし幸いにも過日、財団法人竹林病院との間での業務提携が整う運びとなり、新たな形での透析医療のご提供が、このいわきの地で実現することになりました。詳細はまだまだ計画中でお話しできる段階ではありませんが、必ずや最先端の医療設備とともに、患者さまに心地よい空間のもと、わが国でも有数の透析医療を提供できる施設にしたいと思っております。

かねて以前から常盤理事長の抱いていた構想ですが、いわき市のみならず福島県を代表する腎・泌尿器科の専門医療施設を作ることによって、この地域に最先端の腎・泌尿器医療を提供したいという夢があります。少し大げさに響くかもしれませんが、日本全国規模とも呼べるような腎・泌尿器化総合医療センターを完成させ、そこを中心に地域住民の生活をも巻き込んだ一大メディカルエリアというものを作りたいという、ときわ会のビジョン。いわき泌尿器科の院長として、私自身、大賛成の想いです。

国民医療費の削減という厚生労働省の政策によって、現在わが国の医療施設の再構築が積極的にすすめられつつあります。そうした医療情勢のもと、地元社会のみなさまに今後ともさらに質の高い医療を提供する施設であり続けること、そして多彩なニーズに即した愛される医療機関としての姿を築きあげること。それこそが、私どもに課せられた使命だと考えています。

改革(イノベーション)の重要性

日頃から常盤理事長自身が力説するように、医療施設として最善の医療を将来にわたって提供し続けていくためには、常に時代を先取りした改革(イノベーション)が重要です。ある時点で最善の医療だったものが、時代の進化とともに必ずしもそうではなくなるということを、私たちは日常的に実感しています。常に学び進歩するということが、医療の分野であっても必要なのです。

改革のための第一歩。それは、新しいぶどう酒と新しい皮袋という例えのとおり、「組織構造」の改変と再構築です。本年で創立25周年を迎えたときわ会では、ベテランスタッフ間の阿吽(あうん)の呼吸によってすすめられるシステム、いわば行動規範ができあがっていました。ある面では効率のよい運営ですが、別の意味では時代に即応する柔軟さに欠け、まわりのスタッフが参加しづらい側面があるのも事実でした。そのため従来のときわ会のシステムを、新たな未来を見据えて再構築することになりました。創立25周年を機に、ときわ会では複数のプロジェクトチームと、またそれを統合・管理する組織作りが始動しています。

次に重要なのが円滑な世代交代だと考えています。この新しい組織を、いかに効果的に動かすかということを考えなければなりません。組織を支える単位はひとであり、組織はひと同士の有機的な繋がり(ヒューマン・リンケージ)がないと決して動きません。組織マネージメントの代表的な手法としてよく知られていることですが、いわゆる"ほうれんそう"(報告・連絡・相談)を大切にしていくことが、やはり必要ではないかと思っています。ひととひとのつながり、すなわちリンケージにおいて、ときわ会ならではの素晴らしい文化を継承しながら、そこに属する人間のモチベーションを一段と高めていくということ。今そのために、私たち自身のカルチュアを再確認し、若い世代へ伝え育てるプロジェクトに取り組んでいます。ときわ会の夢を実現し、地域のみなさまに一層の貢献を実現していくため、ときわ会は常に改革(イノベーション)を行なっていきます。

『笑顔とまごころ、信頼の絆』

ときわ会の歩みを振り返ると同時に、その未来を展望するとき、私たちが大切にしていかなければならないことは、ときわ会の誕生以来、連綿として培われてきた地域の方々との固い絆だと確信しています。『笑顔とまごころ、信頼の絆』、ときわ会の本質は、この理念に集約されるのではないでしょうか。私たちの医療が(やや青臭い表現かもしれませんが)「ときわブランド」として地域の患者さまに愛されてきたのは、信頼という絆を大切にしてきたからだと思っています。

ご存知のように、モットーとはモチベーションと同義語であり、私たちの本質をなす理念こそが、ときわ会職員たちの原動力であったような気がします。やさしさやまごころを大切にして一生懸命ケアに努めている若い看護師たちの姿を見ながら、今もそう実感します。医療レベルの高さもさることながら、現在のときわ会のブランドを培ってきたのはこの姿勢であり、これを実践し続けることこそが、「ときわイズム」の大きな柱のひとつなのではないでしょうか。

最後に、職員のみなさまには「ときわイズム」というプライドを持ってこの変革と新しいときわ会作りに参加していただきたいと思います。看護師や技師をはじめ、私たちのスタッフは素晴らしい能力を持っています。お互いの誇りを分かち合いつつ、地域医療のため、そして私たち自身のため、ともに頑張っていきましょう。

そして…

地域のみなさまより賜っておりますご愛顧に心よりお礼申しあげます。創立25周年、職員一同、決意を新たなるものとし、腎・泌尿器医療の向上、さらなる切磋琢磨に全力を尽くして参ります。

地域のみなさまとともに歩むときわ会、今後とも一層のご指導とご鞭撻をお願い申しあげます。