ときわ会HOME > すまいりすと
馬目(まのめ)という苗字、きっと珍しいですよね。私の親の出身であるいわき市小名浜の海沿い地域に多い姓のようです。私自身も小名浜での生まれ育ちです。
地元の高校を卒業後、仙台市内にある予備校の寮に入って受験勉強。そして翌年、長野大学の産業社会学部社会福祉学科に入学。もともと小学校の先生になりたかったのですが、人とのかかわりのある仕事をしたいという想いをもう少し広い視点で見つめ直し、福祉の道へ進むことを決心しました。
大学時代には、例えばご両親が亡くなったり虐待にあうなどした児童を対象とする養護施設や、高齢の方が入所なさる特別養護老人ホームといった施設での実習。泊り込みも含めて、数週間単位にわたる現場体験で多くのことを学びました。
大学卒業後、栃木の高齢者向け施設に就職。3年後にいわき市内の施設へ。事務部門で1年間勤務して、地元にある病院に転職。医療ソーシャルワーカーとして約4年間の経験を積んだ後、ときわ会にご縁を得て入職。楢葉ときわ苑の開設に向けて、その準備段階から参加することとなりました。
ときわ会グループ2番目の介護老人保健施設として産声をあげた、楢葉ときわ苑。2010年8月の開苑から7ヶ月あまりが経った昨年3月に起こった東日本大震災。その影響で、昨春以降は同じグループである小名浜ときわ苑の施設内に機能を移して運営しています。
介護老人保健施設の支援相談部門である私どもの組織には、居宅介護支援専門員(いわゆるケアマネージャー)と支援相談員という職種からなる、計6名のソーシャルワーカーが在籍しています。
例えば病気や怪我などによって障害が起こると、それまでにはなかった医療費や介護、あるいは仕事への復帰といった問題が生じます。そうした生活面や社会面における様々な課題について、患者さんご本人やご家族のみなさんと一緒になって取り組んでいくのが医療ソーシャルワーカーという専門職の役割です。
介護に関するサービスそのものは、私どものような施設に相談にお越しになったり、行政機関に問い合わせることでその情報を得ることができます。あるいは、地域包括支援センターという公的サービスもあります。そこでは、保健師、ケアマネージャー、社会福祉士といった専門職による介護予防などのアドヴァイスを受けることができます。
でも実際には、ごく普通の日常生活が続いている間は、介護に関する制度についてあまりご存じないという場合が多いですね。例えば骨折などが原因で歩けなくなった、ご家族が障害を抱えられたなど、ある日突然生じた状況で初めて必要に迫られるというケースがほとんどなのではないでしょうか。
特別養護老人ホームなどとは異なり、介護老人保健施設はご利用者の在宅復帰を目指すという指針にその基盤を置いています。急性期から回復期、維持期。それぞれの段階における患者さんへのリハビリテーション、そしてご家庭へという流れが基本なのですが、目指しているとおりの姿を実現することが難しい場合もあります。
以前に私自身が担当したケースなのですが、ご自宅で義母とご主人の介護に当たっておられたある主婦が突然倒れて入院なさったのです。そのご家庭では、高齢のために介護を必要としておられる義母、やはり障害をお持ちで要介護のご主人、おふたりの介護をずっとおひとりで担当してこられた奥様、その3人のご家族が暮らしておられたのです。
奥様の入院で残されてしまうことになったご主人と高齢のお母様、ともに介護を必要としておられるおふたりを、地域のケアマネージャーからの依頼を受けて、私がご自宅に迎えにお伺いし、当苑で長期にわたってご入所いただくことになりました。
ご利用者の在宅復帰が実現するための前提条件、あるいは特別養護老人ホームなどの施設をすぐに利用できるかどうかといった様々な課題の存在。
人間や家族、地域そして社会。
私たちソーシャルワーカーにとって取り組みの対象である要素はまさにケースバイケース、千差万別といっても決して過言ではありません。経験を重ねるごとに、その奥深さを実感する日々です。
少し生意気に響くかも知れませんが、様々な方々との出会いを通じて、その方が歩んでこられた人生を私自身も体験させていただくことができる、ということでしょうか。
おひとりおひとりのお話をお聞きして、私のなかでそのお話を受け止め、それぞれのみなさまの人生における尊厳を大切にするための支援をさせていただく。多様な価値観のもとでの新たな発見や経験。そうしたプロセスにおいて、その方とともに、その方の人生をご一緒に生きる。結果として私自身が成長させていただくことができる。
そんな素晴らしさがこの仕事にはある、そう感じています。
ソーシャルワーカーという生き様のもとでは、そうしたロマンの一方、ある意味での割り切りと云いますか、自分のなかに多くのことを抱え込みすぎないことも大切です。あまりにも純粋に悩みすぎることによる、燃え尽き症候群という言葉もあるほどです。
そのケースごとにおいて、患者さんとご家族にとってより良い選択。しかもそのチョイスは、私たち相談員ではなく、あくまでも患者さんご本人やご家族の方々のご判断と意思決定によって行なわれなければなりません。
そしてそのためには、医療や行政をはじめとする様々な地域機関や事業者との連携、人間力のあるストックの蓄積、顔の見える相互ネットワークの構築が欠かせません。
必ずしもひとつのベストに捉われすぎることなく、より良きベターをお選びいただくためのサポート。それがソーシャルワークです。
支援相談部の部門長として現在目指しているのは、ときわ会に相談すれば何とかなるという拠りどころになること、解決の糸口を見出してくれるという安心の支えになること。地域のみなさまからのそうしたご信頼がさらに根づくことです。
ソーシャルワーカーにとってあるべき仕事の姿というのは、望ましい選択をいただいた結果、患者さんとそのご家族にとって私たちによるサポートの継続が求められないことなのかも知れません。
そして将来、私いち個人やひとつの組織を超えた大きな視点からですが、いつかソーシャルワーカーという存在を真に必要としない社会が実現すれば…、心のなかにそんな願いを抱いています。
ゴルフです。25歳頃からやっていて、昔はそこそこ程度といった感じだったのですが、最近は一段とハマっています。毎週1回は練習に行って、毎月1回コースに出るといったペースでしょうか。いわきはゴルフ場のメッカ、震災で少し減ったのですが、現在も市内に12のコースがあります。
技術面もさることながら、特にメンタル面でその深さをますます実感しています。職業としている”ソーシャルなワーク”ではなくて、”パーソナルなプレイ”であるということも愉しいですね♪