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こんにちは。初めまして、リハビリテーション部の高萩裕子です。私は、ことばに障害がありコミュニケーションがうまく取れない方や、食べることが困難な方への援助をしています。
これまでのコラムでは、主に日常生活において身体の仕組みや筋肉、ビデオ体操などをお伝えしてきましたが、今回は「食べる」ことについてお話しします。
人間の本能のひとつに食欲がありますが、これは生命の維持には欠かせません。五感を通して目で楽しみ、鼻を利かせ、口や舌で味わっています。
食べるという行為には、
(1) 摂食(せっしょく)…口に入れる (2) 咀嚼(そしゃく)…噛む (3) 嚥下(えんげ)…飲み込む
という3つの動作があります。
食べることで、お腹が満たされたり、旬を感じたり、幸せを感じたりするだけでなく、ストレスが解消されるという場合もあるでしょう。
年齢を重ねることで食事の嗜好はそれぞれ変わると思いますが、身体も年齢とともに変化しているのです。加齢に伴う食べる機能の低下の原因を具体的にいくつか挙げてみましょう。
1.歯の欠如
歯周病などで歯が抜けてしまったり、歯が少なかったりない状態のこと。
2.咀嚼筋の筋力の低下
食べ物を噛む筋肉が弱くなる。硬いもの(例:せんべい等)が噛めない。
3.口腔内の感覚(知覚)の低下
味が付いているにも関わらず、味がしないような気がする状態のこと。または、味覚障害など。
口の中に食べ物が入っているにもかかわらず、噛む反応を見せなかったりなど。
4.唾液の分泌の低下
唾液の分泌が低下してしまうと、以下の作用が弱まり口腔内環境がうまく作用せず、二次障害(肺炎、発熱、口腔内疾患など)につながる場合もあるのです。唾液には次の役割があります。
(1) 消化作用…摂取した食物成分を消化器内で吸収しやすいように分解すること
(2) 溶解作用…味物質を溶解して味覚を誘発する
(3) 浄化作用…食物の残渣物(かす)を清掃する
(4) 円滑作用…舌や口唇の動きを良くする
(5) 抗菌作用…口腔内を洗い流す
(6) 保護作用…口腔粘膜保護作用
5.口腔、咽頭、食道などの嚥下筋力低下
・食べ物がいつまでも口の中に滞在したり、飲み込めない、溜め込んでしまうなど
・食べ物が喉につまり、むせる、誤嚥してしまうなど
6.注意力、集中力の低下
食べることに集中できない(脳血管障害により注意障害が生じるためや、テレビの音が大きすぎることで注意が散漫になることでも生じます。飲み込むことに集中することは誤嚥を防ぎます。)
皆さんは大丈夫でしょうか?食べることの幸せ、楽しさをいつまでも感じていたいものです。
*口腔体操*
主に口腔周辺の代表的な体操をご紹介します。これらの運動を行なうことで唾液の分泌を促し、食べるために使う機能を活性化します。食事の前にこの「健口(口腔)体操」を行ってみてはいかがでしょうか!!
小名浜ときわ苑でも、集団体操の一環としてこの「口腔体操」に取り組んでいます。
内容は、(1) 深呼吸→(2) 首の体操→(3)肩の上げ下げ→(4)口唇の開閉→(5)口唇の突出(ウの発声)と口角引き(イの発声)→(6)口を大きく開けることを意識しながら、あいうえおの発声→(7)頬の運動→(8)舌の運動→(9)音読→(10)歌を歌うという流れで行っています。
(1)〜(3)はリラクゼーションを図るために
(4)〜(6)は口の動きを良くするために、
(7)は口に取り込んだ食物をうまく喉に送り込むために、
(8)舌の動きを良くし、食物をすりつぶし飲み込みやすくするために
(9)、(10)は口の動きをスムーズにすることだけでなく、精神面を前向きにする働きを図るために
それぞれ、以上のような目的で行っています。
何かご質問やご意見がございましたら、リハビリ部の高萩までお気軽にお知らせ下さい。
<参考文献>
・嚥下障害—ポケットマニュアル—第2版 医歯薬出版株式会社 執筆:聖隷三方原病院嚥下チーム
・摂食、嚥下障害チェックシート 大塚製薬株式会社大塚製薬工場 監修:聖隷三方原病院リハビリテーションセンター長 部長 藤島一郎