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介護予防の視点介護予防の視点

Vol.21 『年を重ねる』をサポートいたします!

こんにちは!理学療法士の鯨岡栄一郎です。
いつも当コーナーを読んでいただき、ありがとうございます。うれしいことに、最近あちこちから「見てるよ!」とのお声をいただくことが多くなりました。これからも色々な情報をご紹介してまいりますね!

高齢化社会が叫ばれて久しい昨今ですが、2008年のWHO公表では、日本人の平均寿命は男性が79.19歳(世界第三位)、女性が85.99歳(世界第一位)となっています。一方、2002年の日本人の平均健康寿命は、男性が71.4歳、女性が75.8歳です。これは、一定の年齢以上になると、平均して8年程度は、何らかの手助けを必要としていることを意味します。

ちなみに現在、当苑に入所されている方の平均年齢は、男性が79.4歳、女性が85.8歳、平均要介護が3.4となっております。
 
しかもなんと、100歳の女性が2名、90代の方は30名(男性4名、女性26名)もいらっしゃるんですよ!みなさん、とても元気にリハビリをなさっています。



私がリハビリを行う上で心がけていることは、出来るだけ人対人、つまり普通の生活者としてご利用者様と接していきたい、ということです。例えば、かつて何人もの部下を抱えてバリバリ働いていた方、会社を経営されていた方、女手一つで何人もの子供を育て上げてきた方・・・。みなさんそれぞれの歴史を背負ってここまで生きてこられた方たちです。
 
私は会話の中で、みなさんの過去の経歴や知識、これまで培ってきたことなどを中心におうかがいしています。むしろこちらがアドバイスを頂く、というスタンスです。すると、みなさん生き生きしてその当時のことや、今考えていることを語って下さいます。こちらも非常に学ぶことが多いんです。やはり、自分が役に立つ存在だ、ということが感じられる瞬間が、人間として輝ける瞬間かもしれませんね。

もちろんみなさんの背景にある疾患は様々なのですが、よく観察すると、年齢と若々しさや活気は必ずしも比例していない、ということに気付きます。いったいどこにその違いがあるのでしょうか?
 
実は、その人の表情、姿勢、日々心がけていること、言葉使い・・などに違いがあります。言葉使いや、物の考え方というものは、それこそ十人十色で違いがあるものですが、人それぞれ習慣となっていることが、その人の価値観や生活信条を形成しているのです。つまり、これまでの人生の積み重ねが「今」ここに現われているわけです。
 
障害としては重いのに、それを感じさせない前向きさ、明るさを感じさせる方、状態は比較的良いのですが、何かにつけて不平不満を口にしている方、後ろ向きな方・・・
 
 
今の心の状態(state)は、1. 焦点(focus)、2. 言葉使い(language)、3. 身体の使い方(physiology)から構成されていると言われます。
 
例えば、言葉使いが悲観的な言葉(例えば、「もうこの先長くない」「死んだ方がましだ」など)を常に口にしている。すると、焦点はおのずと体の思うようにならない部分や悩みの方へ行きます。そして、姿勢が前傾傾向でうつむきがちであれば、必然的に心の状態も下降気味になります。
 
この中で、言葉使いを変え焦点を変えるためには、例えば、1. 言葉に新たなレッテルを貼る、2. リフレーミング(reframing)、3. 比喩(メタファー)などのテクニックがあります。
 
今回は、リフレーミングについて簡単にご説明します。
フレーム(額縁)を変えると、絵も写真も以前とは違った雰囲気に感じますよね?そう、物事のフレームを変えると「意味」が変わります。「意味」が変わると、「反応」や「行動」が変わります。すると、より広い自由な選択肢が与えられ、あらゆる出来事に「プラスの意味」があることが分かります。
 
例)
「失敗してしまった」→「次に失敗しないための、いい体験をしましたね」
「何でも私に押し付けられる」→「頼りにされてるんですね」
「最近調子が出なくって・・・」→「今じっくり力を蓄えているんですね」
 
いかがでしょう? 物事の事実としては同じなのですが、視点を変えることによってそれに対する感情がすぐに変わるんです。「物は言いよう」ということにも似ていますね。

当苑のリハビリでは、コミュニケーションも重視した親身な関わりをモットーとしているのですが、ご利用者様からも、「ここに来ると笑いが絶えない」「ここに来るとホッとするね」など、ありがたいお声を頂戴いたします。
 
もしここに来たら、リハビリ中は、私たちとの関わりによって焦点が違うところに当たり、運動や訓練を通じて、体の動かし方が変わります。そして、気持ちや感情に変化が生まれます。つまり、心と体の好循環ですね。



人間の共通の願いは、「元気に年をとりたい」ということだと思います。しかし、我われが生物としてこの世に生きている以上、細胞レベルでの老化は避けられません。まして現代は、アンチエンジングや脳年齢などに代表されるように、「若いことが全て」みたいな風潮があります。また、今まで元気だった体が日に日に動かなくなっていく、同世代の友人が亡くなられていく・・といったことは言いようのない寂しさがあると思いますし、その感情は計り知れません。
 
このように、年を取るということに関して、誰もがネガティブなイメージを持っていますが、「活き活きと」年を重ねることは悪くないことだ!と思うのです。
 
『今日』という日の積み重ねがまさに人生であり、1日1日を元気に精一杯過ごす。まさに、私自身も今からそうありたいと思っています。それが健康に暮らすことの原点ではないでしょうか。
 
リハビリテーションサービスを通じて、少しでもみなさまの生きがいづくりや元気になるお手伝いをしたい、というのが我われの願いです。

【参考文献】
1)NLPコミュニケーション術  木村佳世子  秀和システム  2007
2)一瞬で「自分の夢」を実現する法  アンソニーロビンズ  三笠書房 2007
3)AWAKEN THE GIANT WITHIN Anthony Robbins FREE PRESS 1991

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

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福島県いわき市小名浜

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