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こんにちは、理学療法士の平山です。
夏の暑さも過ぎて、過ごしやすい季節になってきました。山は紅葉、お出かけの季節ですね。
旅行や外出をすることは、ご高齢の方に限らず、ストレス解消や何か楽しいことがありそうなワクワク感や、旅先でのおいしい食べ物、きれいな景色、出会う人々、たくさんのいい刺激になります。お出かけすると「また明日からがんばろう!」ってパワーが出てきますよね。
また、遠出をしなくても、きれいに身支度をして食事に出かけたり、買い物をしたり、公園でお茶を飲んだり、美術館に行ったり、近場でも非日常を味わうことで十分に気分転換や生き生きと過ごす意欲につながります。以前に比べてバリアフリーのお店や施設が増えているため、車椅子の方も外出の機会がもてるようになってきています。
しかし、体に不安をもつご高齢の方の多くは「足腰が弱くなって」「車椅子になったから」「家族に迷惑をかけられない」と、家に閉じこもりになりがちです。「家で寝ているしかない」と動かなくなってさらに身体が弱くなり、気持ちも落ち込んで、本当の寝たきりになってしまいます。恐ろしい廃用症候群の悪循環です。
元気がないお年寄りを見るのはとてもつらいです。自分たちの○十年後の姿でもありますから. . . 。歳をとっても、身体が弱くなっても、生き生きした気持ちをもった生活を送りたいですよね。
今回は、家族みんなで外出する機会を多くもつために、「車椅子でのお出かけ〜自動車の乗り降り〜」について書きたいと思います。
自動車へ乗り移りの介助
自動車への乗り移りの介助量は、ご本人の身体機能、特に「立ち上がりの能力」や「歩く能力」に左右されます。
自分で立つことができる方であればそれほど介助は必要なく、バランスを崩したときに支えられるよう、介助者がそばに付き添うようにします。後ろからズボンの後ろを持って支えたり、頭が車に当たらないように介助者が頭に手を添えてあげると良いです。
1.
車椅子を自動車と30°の角度で接近させ、ブレーキをかけます。対象者のお尻を車椅子の前のほうへ移動させます。
*対象者の良い側が自動車側にくるように
車椅子を置きます
*窓ガラスは下げておきましょう
2.
介助者は片足を対象者の足の間に入れ、対象者のズボン(またはベルト)を腰の後ろで握ります。
3.
対象者におじぎしてもらい、介助者は重心を後方に移し立ち上がらせます。できるだけ身体を密着させてしっかりと立ちます。
4.
立ち上がって体が安定したら良いほうの足を軸にして身体を回転させます。
5.
介助者は膝を曲げて重心を低くしながら、ゆっくりと対象者のお尻を下ろし、座席に座らせます。
*頭をぶつけないように注意が必要です。
6.
対象者の身体が傾かないように注意しながら両足を車に入れます。
1.
車椅子を自動車と30°の角度で接近させ、ブレーキをかけます。対象者のお尻を車椅子の前のほうへ移動させます。
(<支えがあれば立てる方>の1.と同様)
2.
介助者は頭を、対象者の座席側のわきの下に入れます。対象者は介助者の肩にもたれかかります。介助者は両足で対象者の両足を挟みます。そして対象者の車椅子側の手でズボン(またはベルト)を腰の後ろで握ります。
3.
介助者は重心を後ろへ移し、同時に対象者の身体を前かがみにさせ、膝をてこにして対象者のお尻を持ち上げます。
4.
介助者は自分の腰を回転させ、対象者のお尻を座席にゆっくりと座らせます。
5.
対象者の身体が傾かないように注意しながら両足を車に入れます。(<支えがあれば立てる方>の6.と同様)
介助者と本人が、ドアと座席の間の狭いスペースに入らなければならないため、介助は大変です。
ご参考までに、最近では介助しやすい自動車も販売されています。座席が回転して外側へ向くもの。ドアが引き戸になっており、後部座席が回転して車の外に出てくるものもあります。また、ワンボックスカーのように後部が広い車種ではリフターで車椅子のまま乗り降りできるものやスロープで乗り込むことのできる車もあります。
以上のような車種は各メーカーから市販されており、購入の際は税金の免除などの優遇制度があるので問い合わせてみてください。また、警察署などで「駐車禁止規制除外標章」の交付を受けると、駐車禁止の標識がある場所でも一時的に駐車することができます。
自動車へ車椅子を積み込む
大きなお店では店内用の車椅子が用意されていることがありますが、外出場所全てにあるとは限らないので、車椅子を車に積み込む必要があります。
車椅子をたたむときや開くときは座面のシートを持って手を挟まないように気をつけましょう。車椅子は自動車のトランクか後部座席に積み込むので、できるだけ収納しやすい、軽量タイプや車椅子の背もたれが折りたためて小さくなるものが便利です。
ご本人の身体機能や使用目的によって色々な車椅子があるので、車椅子を選ぶ際は、どうぞご相談ください。
いきなり長距離の旅行はご家族にもご本人にも負担になってしまうので、まずは短時間、近場へお食事に行ってみてはいかがでしょうか。インターネットで「バリアフリーマップ」と検索すると、お家の近くのバリアフリーのお店が紹介されているホームページもあるので、お店探しの助けになります。ご不明な点はお尋ねください。ご家族、ご本人の気分転換になれば幸いです。
<参考・引用文献>
・田中義夫:高齢者の外出・旅行 サポートガイドブック 中央法規出版株式会社 2007
・中村春基他:在宅ケアハンドブック 脳卒中の在宅リハビリテーション 社団法人家の光協会 2000
・社団法人 日本理学療法士協会・学術局:家庭でできるリハビリテーション 有限会社アイペック 2001
・木村哲彦:新イラストによる 安全な動作介助の手引き 第2版 医歯薬出版株式会社2004