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皆さん、こんにちは!リハビリ部の高萩です。
今年も残り1ヶ月となりました。年末年始は、何かと宴会や親戚中が集まっての食事会などの機会が多く、暴飲・暴食となりがちな時期ですよね。今月は「噛むこと(咀嚼)のすすめ」についてお話しします。
噛むこと=咀嚼する=口の中に入れた食物を細かく砕き飲み込みやすくすることです。
噛むことは、食べることばかりではなく消化を促し、顎の成長や、咀嚼筋の発育、脳への刺激や賦活化につながる大事な役割もあります。
● 癌を防ぐ
唾液にはがんを抑える物質が含まれています。よく噛む人なら誰でも、がんの「予防薬」をおのずと日常的に服用していることになるわけです。
● 認知症を予防する
咀嚼の回数を増やすことで大脳が刺激され、脳への血流が促進されます。パロチン(唾液腺ホルモンに含まれており、これは若返りホルモンといわれ、いちばん老化の激しい歯、毛髪、生殖器などの機能維持に効果があるといわれている)が分泌することにより、老化の防止になり、認知症の防止になるという働きがあります。よく噛むことで脳の機能が刺激され、記憶力、集中力、判断力など高まります。
● 糖尿病の予防
咀嚼によって味覚が刺激され、脂肪代謝を刺激するホルモンであるノルアドレナリンが分泌されます。また、食事の時間が長くなることで、大脳の満腹中枢が働くため過食も解消されるそうです。
● 虫歯の予防
よく噛むことで、唾液の分泌が促進されます。唾液の中には、身体に良い働きをする様々な酵素やホルモンなどが含まれており、消化や吸収を助けます。作用は胃の中でも持続し、胃酸で停止します。耳下腺、顎舌腺からはパロチンが分泌され、骨や歯の発育を促し、加齢現象を抑えます。
● 口臭を防ぐ
唾液(だえき)は食べた物の消化を助けるだけではなく、口の中の洗浄、殺菌、ペーハーの調整など口内環境を一定に保つ重要な働きがあります。
● 骨粗しょう症の予防
乳製品、豆腐、小魚、海藻、ごま、緑黄色野菜、海藻、野菜、豆、種実類などのカルシウムやマグネシウムを含むものを良く噛む事で吸収が良くなります。
● 姿勢が良くなる
咀嚼をするときに使う咀嚼筋は、姿勢にも関係します。正しい噛み合わせでよく噛めば、姿勢もよくなり、体が健康に機能します。
● アトピー性皮膚炎の予防
よく噛んで、唾液で混ぜて食べ物特有の化学構造を変化させ、胃腸でアミノ酸とかペプチドと言う体に順応する物質に変化します。ここまでやってはじめて身体にやさしい食べ物と言うことになります。
● 視力の回復
目は咀嚼筋の近くに存在し、目の周りの血行が良くなります。噛むことで水晶体の厚みを調節する毛様体筋のコリをほぐす働きがあります。
● 積極的な性格になる
噛むことで、顎の骨や歯肉がしっかりするので、歯に体重分の力がかかっても大丈夫で、歯をくいしばり、体全体に力を入れることができます。
● 内臓が若返る
内臓脂肪分解や体熱産生・放散をともに促進し、体重を減少させる。・・・という論文も発表されています。
● 性欲が増す
咀嚼(リズム運動)がセロトニン神経を活性化します。セロトニンとは、脳内で分泌される神経伝達物質のひとつで、トリプトファンという名の必須アミノ酸の代謝過程で生成されます。他の神経伝達物質であるドーパミン(喜び、快楽)やノルアドレナリン(恐れ、驚き)などの情報をコントロールし、精神を安定させる作用があるため、この物質濃度が低下すると、不安やうつなどの精神症状を引き起こすといわれています。
● 太らない
よく噛んで食べると、はやく血糖値が上がるため、脳の満腹中枢を刺激します。ゆっくり時間をかけて(20分程度)食べれば、腹八分目で満腹感を味わえるでしょう。
● その他:経済的である
ゆっくり噛んで食べる事により、満腹感が増し小食でよくなる。つまり家計にも優しい食べ方であること。
「食べる」ことは人間にとって基本であり、楽しいことでもあります。早食いはせずに、ゆっくりよく噛んで、味わう・・作ってくれる人への感謝もしながら・・
毎食一口30回は継続しにくいと思うので、夕食に良く噛んで食べる事を意識して行っても良いでしょう。 (ちなみに、「もしもし亀よ〜亀さんよ〜♪」の歌で噛むようにすると、約31回の咀嚼になります。)
まず一歩! 普段の自分の咀嚼はどうかと気にしながら取り組んでみてください。
【参考文献】
・誰も気づかなかった 噛む効用 日本咀嚼学会 (編集) 窪田 金次郎
・かむこと、のむこと、たべること 大橋 靖 (編集)