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こんにちは、理学療法士の平山友恵です。
今回は「杖」についてお話したいと思います。
特に病気がなくても、年を重ねるのとともに筋力や持久力、バランスをとる力が低下し、個人によって差はあるものの、歩くことが不安定になってきます。
「転ばぬ先の杖」ということわざがあります。失敗しないよう前もって準備する、という意味だそうです。転んで骨折、それが原因で寝たきりになってしまうこともあります。もし最近、歩くときふらつくようになってきたと感じる方は、転ばないための対策として、まずは ㈰身体の機能を高めるリハビリテーション、㈪手すりの接地や段差の解消など住環境の整備。そして、㈫杖や歩行器などの福祉用具の使用を考えてみてください。
杖は、下肢の筋力低下を補って、バランスをとりやすくし、歩く速さが向上し、膝や股関節の負担を軽くし、転倒の危険を減らしてくれます。杖の特徴や、使う場所、身体の状態に合ったものを選ぶことが大切です。
次に、杖の種類と特徴についてご紹介します。
一本脚による杖。ステッキは握り部分がU字。T字杖は握り部分がT字で体重がかけやすくなっています。比較的歩行バランスの良い方が対象です。一本杖は足への荷重を免荷する程度が少ないため、骨折などで足への荷重を少なくする目的にはあまり使いません。持ち運びできる折りたたみ杖もあります。
杖の先端が3つか4つに枝分かれして接地面積を大きくしている杖です。多脚杖は、一本杖よりも安定性が増しています。その分、重量がかさばったり、真上からまっすぐ杖を突 必要があるため平地でないと使いづらい欠点があります。屋外での使用は平坦地でないと難しくなっています。脳血管障害による片麻痺の方をはじめ、高齢者の変形性股関節症やリウマチ等で、T字杖では不安定な方に使用していただいています。
握り部分と前腕で支えるカフ部分があり、2箇所で体重を支えることができます。腕力が十分にない方に有効です。松葉杖のように2本で使うことができます。
脇当ては脇の下から卵ひとつ分下に調整し、握り部分で体重を支えます。通常は2本1組で使用し、前腕固定杖より安定性があります。片足に体重をかけられない、下半身の麻痺、骨折、捻挫、股関節症、下肢切断や筋力低下の方が使用します。
多脚杖よりも支持面積が広いため安定性があります。立位や歩行のバランスがかなり低下しているときに使用します。立ち上がり時に支持がほしい場合にも有効です。平らな広い空間での使用に適しています。重量があるため長距離歩行には向きませんが、折りたたみ可能なので車での持ち運びができます。
杖の歩行ではバランスや耐久性が保ちにくく、下肢や上肢が弱くなっている場合は、杖よりも多くの体重を支えられ、安定した立位歩行ができる、歩行器もあります。
杖の長さは、握りの高さが股関節の付け根の出っ張った骨(大転子)で、肘が20〜30°曲がった状態にすると腕に力が入りやすいといわれています。ただし、杖の長さは、疾患やご本人の使った感じ、使う場所によっても違ってきます。腰が曲がっている方は、背を伸ばして合わせた長さより2cm位低めにした方が、力が入りやすいことがあります。調節式の杖で一度歩いてみて決定するのが良いと思います。
「杖なんてかっこ悪くて使えないよ」というお気持ちを持たれる方もいらっしゃると思います。最初はなかなか杖を受け入れづらいことが多いようです。
最近は、杖のデザインもおしゃれになって、お出かけも楽しくなるような杖が増えています。インターネットで調べてみましたが、花柄、ヒョウ柄、漆塗り、蒔絵、細工、きれいなストラップなどなど豪華なものがあってびっくりしました。自分だったらこれが欲しいなあなんて思いながら眺めていました。杖が必要なくても、欲しくなるような杖なんです。
また、介護保険でも杖のレンタルが可能です。一本杖は対象外ですが、身体の状況に応じて変更できるので便利です。
杖選びの際は、お気軽にスタッフにお尋ねください。一緒にお気に入りの一本を選びましょう!
[参考文献]
三浦裕士:CLINICAL REHABILITATION別冊 さあ取り組もう!在宅医療リハビリテーション−実践ポイント110− 1998
河野公一他:障害からみた 高齢者在宅リハビリテーションマニュアル 2002