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こんにちは。理学療法士の佐川順子です。やっと秋らしくなり、過ごしやすくなってきましたね。今年の夏は、猛暑に続き残暑も厳しく、体調管理が難しかったのではないでしょうか?
さて今回のコラムは、「犬とのふれあい」がテーマです。私自身が、アニマルセラピー委員会に所属していることと、9月中旬から、当施設内でゴールデンレトリバーの飼育が始まるにあたり、「アニマルセラピーについて」や「これまでの経過」などをご報告させていただきたいと思います。
最近、テレビや新聞、雑誌などでも「アニマルセラピー」が紹介されていることがありますね。アニマルセラピーの分類には、「動物介在療法」と「動物介在活動」があります。
日本では、動物介在療法も動物介在活動も「アニマルセラピー」と呼ばれてしまっていますが、治療を専門とした「アニマルセラピー」とは、「動物介在療法」:AATを指しています。
日本ではまだ、医学的にも科学的にも実証されていないことが多いようですが、ペットと暮らす生活の中で、リラックス効果や癒されることを経験している方も多いと思います。
人から他の動物に、あるいは人以外の動物から人に感染しうる疾患のことを「人畜共通感染症」と言い、日本の場合ペットに関する人畜共通感染症はおよそ30種類もあるといわれている。なかには、重い症状につながりかねないものもある。また、動物関連各種のアレルギー症状が起こったり、悪化したりする場合がある。
精神疾患が悪化している最中の患者に対しては、動物やボランティアなどと触れ合うことが重荷となり、触れ合うことができなければならないと思ったりして、新たなストレスが生まれることとなる場合がある。
嫌いといってもその程度は様々だが、特に小さい頃に噛まれたなどのトラウマを持っている人に対して、しつこく動物を触れ合わせるようにしては人間関係自体が悪くなる。もしくはそれ以外のものも悪くなる場合もある。
平成21年2月にアニマルセラピー導入の意見が上がり、施設飼育型実施施設の見学が行われました。同時にアニマルセラピー委員会も発足され、平成21年9月からは、本格的に職員が飼っている犬とのふれあい(わんわんデー)が始まりました。月に一度、1時間程度の犬とのふれあいでしたが、集まっていただいた利用者の方々からは笑顔があふれ、犬に話しかける姿も多く、職員と利用者の会話や利用者同士の会話、その後の家族との会話も盛り上がりました。
平成22年6月、ボランティア団体の動物とのふれあいが導入される頃には、すっかり「わんわんデー」の開催は定着し、動物の訪問を心待ちにしている利用者も増えて、日常会話の中にも「今度は、いつ来るの?」「この間のワンちゃん、可愛かったね。」などの声や若い頃や入所前に飼っていたペットの話題が出ることが多くなってきました。また、居室に引きこもりがちになっていた利用者が、自ら車椅子を自操してくるなどの活動性の向上がみられたり、落ち着きなく苑内を歩いていた利用者が、犬を膝に抱えて穏やかに過ごしていらっしゃる姿もありました。
施設内には、飼育する犬の写真が掲示してあり、名前の募集も行いました。たくさんの応募(マル、マロン、ポチ、ナナ、たま、ハッピー・・・あずき、あんこ、トロ、これは食べたい物のリスト?)の中から、ゴールデンレトリバーは「さくら」、キャバリアは「もも」に決まりました。平成22年7月には、公認訓練士による内部勉強会を開催しました。
当施設では、アニマルセラピーの導入にあたり、施設訪問型の動物介在活動から開始しました。当初は、職員に行ったアンケート調査からも不安な意見が多く聞かれました。しかし、実際に行ってきた動物と触れ合いを通して、利用者の方々に身体的・精神的、社会的効果が得られることが確認できました。反面、感染症やアレルギー、動物と触れ合うこと自体がストレスとなる場合などのもあるので、かかりつけの動物病院や公認訓練士の先生方の指導や助言のもとに、職員への教育を実施し、職員の計画的な働きかけによって動物介在療法への移行を行うことが重要であるとアニマルセラピー委員会でも考えています。
最後に、施設内で犬を飼うことはまだまだ珍しく、疑問や不安な点もあるとは思いますが、皆さまの協力や助言をいただきたいと思いますので、是非とも当施設に足を運んでいただく機会が増えてくれるとありがたいなと思っています。
参考資料
林良博、1999、「検証アニマルセラピー」講談社
横山章光、1996、「アニマル・セラピーとは何か」日本放送出版協会