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介護予防の視点介護予防の視点

Vol.47 震災から学んだこと

〜環境の変化と利用者様の適応力〜
<床からの立ち上がり編>

こんにちは、理学療法士の平山友恵です。
まず始めに、このたびの東日本大震災で、今なお被災に苦しんでいる方々に一日も早く心穏やかな生活が戻るようお祈り申し上げます。 私たち小名浜ときわ苑も、入所者、職員丸ごと避難し、大変お世話になった千葉県の鴨川市から、4月11日に小名浜に戻り、現在、入所、通所リハビリや訪問リハビリを再開し、スタッフ一同一丸となり利用者様の日々の生活を支援させていただいております。

そのような中、今回の震災で、デイケア利用者様の中にも色々な場所へ一時避難された方が多くいらっしゃいました。近県から関東などへ、80歳90歳になり思いがけず長旅をすることになったと、苦笑されていました。その方々に避難先での様子をお聞きすると、「ベッドがなくて大変だった」との話をされる方が多くいらっしゃいました。

足腰が弱っていたり、障害があり、普段はご自宅でベッドを使用されている方が多いため、避難した場所で布団からの立ち上がりが問題になったそうです。

そこで今回は、その方の状態に合わせて環境を整えることが大切ですが、どうしてもベッドを置くことができない状況だったり、万が一バランスを崩して床に座り込んでしまった場合に必要な、床からの立ち上がりの介助方法を紹介したいと思います。

少ない介助で立てる場合









一人で立っていることができる方など、少ない介助で立てる場合で、床から直接立ち上がる方法です。

1.筋力の強いほう(麻痺や痛みのないほう)の足の膝を曲げます(ここでは右足)。
介助する人は弱い足側の後ろ外側に片膝をつきます。

2.筋力の強いほうの膝の前に手をついて、体重を手に乗せながらお尻を持ち上げます。
介助する人は、腰を持って、ついた膝を中心に回すようにお尻の持ち上げを介助します。

3.膝をついているほうの足先を立てます。


4.前かがみになりながら、膝をついた足を伸ばし、お尻を持ち上げます。

5.足に体重を乗せながら、体を起こして立ちます。
介助する人は、バランスを崩さないよう支えます。

多くの介助が必要な場合













多くの介助が必要な場合は、床から直接立ち上がるのは、介助する人の負担も大きく、転倒の危険も高くなります。そのため、床からまず椅子に座り、その後立ち上がる方法が安全です。

>1.椅子を筋力の強いほう(麻痺や痛みのないほう)の足側のななめ前に置きます。強いほうの足の膝を曲げます(ここでは右足)。
介助する人は、片膝をつきます。

2.筋力の強いほうへ、体を回して、前かがみになりながら、膝と手に体重を乗せるようにし、お尻を持ち上げます。
介助する人は、弱い方の足を膝と手で支えながら、腰を持ち上げます。

3.膝を付いている側の足先を立てます。

4.椅子に手をつきます。

5.手に体重をかけ、つま先に力を入れて、立ち上がりながら、体をまわして椅子に座ります。
介助する人は、腰を持ち上げながら、体をまわして椅子に座るのを手伝います。

適切な環境整備とは?

避難先で環境が大きく変わり、体調不良や、意欲の低下、または、横になっている時間が長くなり足腰が弱くなってしまう方がいらっしゃいました。その一方で、車椅子が使えない状況で伝い歩きを毎日行うことで、どんどん歩けるようになっていく方が何人かいらっしゃいました。

ある利用者様は片麻痺があり、日常生活はほぼ自立していましたが、麻痺側が少し動きづらいためベッドを使用されていました。今回の避難で、やはり避難先で布団を使用することになり、床から立つ動作を何度も行っていたため、筋力がつき、バランスも良くなり、歩くスピードが速くなり、杖なしで歩けるようになったそうです。

ご本人に合った適切な環境を作ることが、過ごしやすい生活をするために大事な事です。しかし、適切な環境とは「安楽」ということだけではなく、ご本人が持っている力を最大限に引き出すことができる環境、つまり生活リハビリの場を作ることが大切なのだと、今回再発見しました。ただし、無理な動作を繰り返すことで、痛みが強くなることがあるので、慎重にご本人の状態を確認していきましょう。

今回の地震、避難という状況で高齢の利用者様が、大きな環境変化で体調を崩したり、今までどおりの活動ができないことで身体機能が低下することが心配でした。その心配をよそにどんどん歩けるようになっていく利用者様をみると、これが明治、大正、昭和、平成と生き抜いてきたたくましさなのかと、感服しました。

私達も、震災で変わった環境に負けずに、利用者様に対してより良い支援ができるよう、がんばっていきたいと思います。

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

福島県いわき市小名浜

☎ 0246-58-2300

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