ときわ会HOME > 介護老人保健施設 小名浜ときわ苑 > 介護予防の視点
こんにちは。理学療法士の佐川順子です。厳しい残暑や、続く余震、突然の豪雨や原発問題などで、なかなかホッとできない日々が続いておりますが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか?
ストレスやその解消法については、Vol.46『「ストレスと老化」の関係』の中でも、詳しく紹介されておりますが、とても緊張している時に、大きく息を吐き出したら、力が抜けて楽になった経験はありませんか?今回のコラムは、リラックスのための「呼吸法」についてお話したいと思います。
「息」を辞書で調べてみますと、呼吸すること、口からはく空気、組になった数人の間での調子、とあります。また、息のつく言葉は、「息切れ」「息苦しい」「息せき切る」「息遣い」「息継ぎ」「息詰まり」「息抜き」「息根」「息巻く」「息む」…。
息のつく文は、「息が合う」「息がかかる」「息が通う」「息が切れる」「息が絶える」「息が続く」「息が詰まる」「息がはずむ」「息を入れる」「息を凝らす」「息を殺す」「息をつく」「息を継ぐ」「息を詰める」「息を抜く」「息をのむ」「息を引き取る」「息を吹き返す」、など。辞書でざっと探しただけでも随分たくさん見つかりました。
それらの「息」のつく言葉や文をみると、わたしたちは様々な場面や状況の下で、呼吸をおさえてじっとしてみたり、ほかの人と何かを成し遂げようとした時は呼吸を合わせたりと使い分けているのがわかります。意識的に呼吸をコントロールする方法がわかるようになれば、上手にリラックスすることができるのではないかと思います。
男性の多くは意識せずに腹式呼吸を行っているようですが、女性は胸式呼吸の方が多いそうです。では、腹式呼吸と胸式呼吸は、どう違うのでしょう?
腹式呼吸は、おなかを意識する呼吸で、息を吸うときにおなかが膨らみ、吐くときに元に戻ります。この呼吸法には、横隔膜・胸郭・腹筋が関わります。胸式呼吸は、胸を意識する呼吸で、息を吸うと胸が膨らみ、吐くと元に戻ります。この呼吸法には、横隔膜・胸郭・肋間筋が関わります。
腹式呼吸や胸式呼吸のほかに、あまり聞いたことがない逆腹式呼吸もあり、太極拳や気功などの東洋武術・健康法で使われるそうです。ここでは、腹式呼吸のやり方を紹介したいと思います。
まず、背筋を伸ばして、鼻から丹田(おへその下)に空気をためていくイメージで、息を吸い込みます。つぎに、口からゆっくり息を吐き出します。おなかにためた空気をすべて出しきるような感じで行います。なかなかコツがつかめないと言う方は、「吐く」という動作をできる限り長くゆっくり行うことです。また、息を吸い込むときには、素敵な景色を想像して、息を吐き出すときには、体の中の嫌なものをすべて出してしまうような気持ちで行うと良いかもしれませんね。
息を長くゆっくり吐き続けることで、脳内のセロトニンを活性化させたり、腹式呼吸では呼吸のたびに内臓が動くので、胃腸の働きや内臓の血行を促す作用もあるそうです。
次に、深い呼吸ができるように運動を行なってみましょう。
息を吸いながら体幹を伸ばしてみましょう。こんどは、息を吐きながら体幹を縮めます。
息を吸いながら真上を見上げます。息を吐きながら、下を向きます。
両手を脇に垂らし、息を吸いながらゆっくり肩を上げます。吸いきったら、口から息を吐きながら、肩の力を抜いて肩を下ろします。
息を吸いながら腕を前から頭の上に上げます。息を吐きながら、腕を下ろします。
息を吸いながら、手のひらを上に向けて横に腕を上げます。息を吐きながら、手のひらを下に向けて腕を下ろします。
両手指を胸の前で組み、息を吸います。口から息を吐きながら、両手を回内させて、手のひらを前に向けて両腕を前方へ伸ばして背中を丸めます。
両手を組み、息を吸いながら、手のひらを上に向けて真上に伸ばします。息を吐きながら、体幹を横に倒します。息を吸いながら元に戻します。元の状態で息をゆっくり吐きます。
両手を組み、息を吸いながら、手のひらを上に向けて真上に伸ばします。息を吐きながら、ゆっくり体幹をひねります。息を吸いながら元に戻ります。元の状態で息をゆっくり吐きます。
ぜひ無理のない範囲で、自分のペースで行なってみてください。筋の柔軟性が低下して、浅い呼吸になっているかなと思ったら、是非、おなかに手を当てて、腹式呼吸を行ってみてください。
こころと身体がリラックスできて、元気に過ごしていただけると嬉しく思います。
参考文献:
須郷 昭 「呼吸を変えればあなたが変わる」 現代書林
雨宮隆太・橋逸郎 「初めての呼吸法」 ベースボール・マガジン社