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こんにちは、作業療法士の高野栄吉です。猛暑や台風の猛威も過ぎこれから秋も深まり寒くなってきます。寒くなるとトイレが近くなりますよね。当苑の利用者様でも頻尿で常にトイレに通う方々がいらっしゃいます。頻回にトイレに行くことも大変ですが、集中して何かを行なうことも出来ず、日々尿意に振り回されている方を見るととてもつらく思います。そこで今回は、頻尿のトラブルについてお話をしていきたいと思います。
頻尿は特に高齢者ほど多く見られます。頻尿の診断基準として、日中は8〜9回、夜は1〜2回以上トイレに行く場合をいいます。頻尿の原因としては、以下のものがあります。
肥大した前立腺が尿道を圧迫して尿の勢いが弱くなること以外にも、膀胱自体に大きくなった前立腺で圧迫する刺激や排尿が滞ることによって膀胱を刺激し頻尿や残尿間などの症状が出現します。
2002年より国際的に定義された症状の名称で、急に我慢できないほどの強い尿意が起こったり、トイレに何回も行ったり、我慢できずにもらしてしまうことなどあります。加齢により発症する割合が多くなり、男女ともに発症しますが、特に尿漏れなどは特に女性が多い傾向にあります。原因は脳血管疾患やパーキンソン病や脊髄損傷などの脳や脊髄などの神経障害から来るものや、加齢や骨盤底筋(膀胱、膣、直腸、子宮などを骨盤の一番下で支えている筋肉や筋膜のこと、男性にも存在する)のゆるみ、男性なら前立腺肥大症などが原因と考えられますが、原因が分からない(突発性)ものもあります。
トイレの回数が増え、排尿の後も残尿感があり排尿時は刺すような痛みさえ感じたり、排尿のたびに痛みが出て血尿や腰にも痛みが出現する場合があります。慢性的になると完治することが難しくなるため早期の受診をお勧めします。薬物療法として抗正物質を使用します。それでも効果が見られない場合、ほかの病気も考えられるため、お医者さんと相談して詳しい検査などを受けるようにしましょう。また、オムツをはずそうとしたり頻回にトイレに行こうとする利用者様の中には、案外膀胱炎を発症している方もいるそうです。
外出する時になると頻尿になるのに自宅にいるときは尿意は正常といった場合、他の病気が原因かを見極めてから必要に応じてカウンセリングなどを行います。案外、排尿日記をつけてみると、外出した時も思ったほどトイレに行っておらず「外出するとトイレが近い」と言う不安な気持ちから頻尿をイメージしているケースもあるようです。カウンセリングとともに不安な気持ちをやわらげる薬を飲みながら対応することも効果があります。
夜間頻尿で多量に尿が排出される場合は、糖尿病による排尿障害の可能性があります。また、頻尿から膀胱癌や前立腺癌を発見するケースも少なくありません。膀胱癌は膀胱炎に、前立腺癌は前立腺肥大症と似たような症状が見られます。薬を飲んでもあまり変化などない場合は速やかな受診をお勧めします。
通常、眠れるように夜間はおしっこを作る量を抑えるために抗利尿ホルモンが脳下垂体から分泌されます。しかし高齢になるとこの抗利用ホルモンの分泌も十分に出ないために夜間の尿量が増える傾向にあるのです。さらに、服用している薬の影響で尿量が増える場合もあるそうです。高血圧に使われる降圧剤・心臓病に使われる強心剤には尿の出を良くする働きがあります。最後に加齢によって小さい物音でも目を覚ましてしまうなど眠りが浅くなることも原因といわれています。
対策としては、膀胱の過剰な収縮を抑える薬を服用したり、今飲んでいる薬の副作用を先生に相談して利尿作用がないか確認することもお勧めです。さらに自然な睡眠リズムを取り戻せるように日中活動性を高めたり、日中日に当たることも体内時計をリセットすることも大切です。
また、今回頻尿で調べてみると、興味深いことも発見したのでご紹介いたします。
もともと日本人は欧米と比べて膀胱容量が少ないとも言われており、尿量が少ない段階で排尿を行うと膀胱の容量が少なくなり結果頻尿になることもあるそうです。頻尿の方に尿意を感じても15〜30分は我慢して非尿間隔を延ばしていく膀胱訓練をしてはいかがでしょうか。(理想はトイレまでの間隔を3〜4時間おきにする)。この訓練をする事で過活動膀胱や切迫性尿失禁などにも効果があるといわれています。
成人の1日の尿量は平均で1500〜2000mlとされています。1日の水分摂取の約3分の1は食物中に含まれていることから残りの3分の2が飲料水として摂取する目安となります。水分の過剰摂取で血液の粘度がかわるという科学的根拠はないそうです。逆に過剰な水分摂取は夜間などの頻尿につながることもあります。水分補給も適量が大切なのですね。
よく利尿作用があるものとしてよく言われているビールなどのアルコール、これも適量を超えると頻尿や残尿感を引き起こすそうです。実は私、以前頻尿と残尿感が気になり受診したことがあるのですが、先生から酒を控えることを進められました。現在はアルコールを制限しているせいか、頻尿を含む排尿トラブルはなくなりました。
排泄トラブルの原因となる骨盤底筋のゆるみは、加齢や出産が要因となりますが、生活習慣とも大きく関係しています。肥満や慢性的な便秘なども影響しているともいわれており、食事内容とともに適度な運動、さらに骨盤底の筋肉を動かすことが一番のポイントです。骨盤底筋は肛門や膣に力を入れたり緩めたりすることで強化できます。
10秒ぐらい締めたままにします。3回行います。その後、早く締める、緩めるの繰り返しを10回続けます。これを1日5セット行います。遅くとも3ヶ月くらいから効果が出てきます。ぜひ今日から是非始めてみてください。
仰向けに寝て、足を肩幅に開き膝を少し立てる。体の力を抜く。
机の前で足を肩幅に広げて立つ。両手も肩幅に広げて机につき、体重を腕にかけるようにする。背筋を伸ばし、顔はまっすぐ前を向いて肩とお腹の力を抜く。
両足は床につけ、肩幅ぐらいに開く。顔を前に向け、背筋を伸ばして座る。肩の力を抜き、おなかに力が入らないようにする。
床に膝をつき、肘を立ててそこに頭をのせる。
骨盤底筋を鍛えることで、女性の排尿トラブルの改善が期待できます。男性は前立腺を貫通し2回カーブがある長い尿道であるため、尿が尿道に残る人も多いそうです。排尿を終わった後にパンツにシミを作ることもあると思います。骨盤底筋を鍛えることで、しっかり尿を排出させ、残尿感を軽減させることができます。是非みなさんも頑張って鍛えてみてください。
参考文献)
・暮らしと健康2011、4月号:橋本悟 著
・トイレが近い人の読む本頻尿の原因と治療:本間之夫 著
・パンツは一生の友達排泄ケアナース実践録:西村かおる 著