ときわ会HOME > 介護老人保健施設 小名浜ときわ苑 > 介護予防の視点
みなさん、こんにちは。小名浜ときわ苑リハビリテ—ション部の平山友恵です。まだ寒い日が続きますね。皆様、体調を崩されてはいないでしょうか。寒くて布団の中にいることが増えたというお話もちらほら聞かれます。
「うちのおばあちゃん、寒くなってから寝ていることが増えて、最近身体が弱くなって起きるとふらふらして危ないから、ほとんどベッドで過ごすようになってしまった。ずっと寝たきりになったら大変だ。」なんて方はいらっしゃいませんか?
起き上がることができず、ベッドから離れることができない人は、動かないことによって、体にさまざまな悪い影響がでてきます。関節がかたくなったり、内臓・心肺機能や全身の筋力の低下、バランス機能の低下、精神機能の低下、床ずれなど、「廃用症候群」と呼ばれる障害がおこってきます。
これらを防ぐために、少しずつでも運動することが大切です。ベッドで少しずつ体を起こすようにし、まずは座ることを目標にしてみましょう。
寝たきりを防ぐためには、まず座ることです。座ることで視界が広がり、窓からの景色が見えて、新しい刺激が増えることで意識がはっきりして、意欲がわいてきます。また、関節が硬まるのを防止したり、重力に抗して姿勢を保つ筋力がついたり、床ずれ防止や便秘の改善にも効果が期待されます。
しかし、長い間寝たきりだった人を急に起こすことは危険です。長い間、寝たきりになっていた人は、血圧を調整する機能が低下しているので、横になっていた体を急に起こすと、血流が下半身に下がって、脳の血流が少なくなってしまい、めまいや吐き気、頭が重くなったり、顔色が悪くなる、脈が弱くなるなどの症状がおきます。これを起立性低血圧といいます。
このようなときは、背もたれの上がる介護用ベッドで、段階的に角度を30°、60°、90°と上げて体を慣らしていくことが必要です。途中で起立性低血圧の症状が現れたら中止します。徐々に時間をのばしていき、5分、10分、15分と身体を慣らしていきます。起立性低血圧は、重症になると意識喪失を起こすことがあるので、できれば、理学療法士や訪問看護師、保健師等に相談のうえ行うことが安心です。
当苑でも、ご自宅へ訪問しリハビリを行う、訪問リハビリを行っています。ぜひご相談ください。
ベッドから足を下ろして座れたら、最初のうちはふらふらして後ろに倒れそうになるかもしれません。そこですぐに座れないとあきらめず、次のことを行ってみてください。
まず、足をしっかりと床につけましょう。介助が必要な方のベッドは、介助しやすいように高くなっていることがあります。ベッドが高いと起きたときに足の裏がしっかりと床につかないことがあります。床まで足がとどかないときは、ベッドを低くするか足台を使いましょう。座った姿勢でバランスをとるには、床に足をつけて、しっかりとふんばることが大切です。
背筋を伸ばした良い姿勢で座れることが一番ですが、うまくバランスがとれないときはできるだけ前かがみになったほうがバランスがとれることがあります。
座ることが訓練になってしまうと、座ることが嫌になってしまいます。何もせずに、ただ10分座っているのは退屈です。「一日○回○分座る練習」というよりは、食事の時間に合わせて座ってみたり、日記を書いたり、新聞を読んだり、テレビを見たり、何か楽しいことをしながら自然に座る機会を増やしていけると良いですね。
食事以外、他にやることが思いつかないな、という方に身のまわりにあるものでできる運動を一つ紹介したいと思います。
200ml入りくらいの小さいペットボトルに半分ぬるま湯を入れていただきます。これを両手で握り、ちゃぷちゃぷ音がなるように振ります。自然と肩、肘、手首を動かすことになり、腕の筋力をつけたり、関節が固まらないようにする運動になります。途中で疲れてしまったら、持っているだけでも、温かいお湯で、冷えやすい指先の循環が良くなり手が温かくなってきます。
温かくなって動きやすくなった手をグーパー運動でストレッチしてみましょう。おなかの上に乗せて温めてあげると、腸の動きが刺激され便秘解消が期待されます。太ももの上をころころマッサージしても、温かさで筋肉がほぐれやすいです。15分くらいでぬるくなってきたら終了です。テレビの歌謡ショーを聞きながら振ってみてはどうでしょう。
簡単な運動からはじめて、無理せずゆっくりと、痛みのない範囲で、身体を動かすことに慣れていきましょう。車イスに移れるようになったらベッドから離れることができ、活動の範囲が広がります。
暖かい桜の季節まであと少しです。春になったら椅子に座って庭の花を眺められるように、今日から少しずつ座ってみてはいかがでしょうか?さらに、車椅子でお出かけできるようになると良いですね。
参考資料
三好春樹:イラストエッセイ 老人の生活リハビリ
河野公一他:障害からみた高齢者在宅リハビリテーションマニュアル
飯島修:要介護3・4・5の人のための在宅リハビリ やる気がでる簡単リハビリのすすめ