平成18年3月 | 岩手医科大学卒 |
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平成18年4月 | 岩手医科大学医学部泌尿器科学講座入局 |
平成22年4月 | 岩手県立釜石病院泌尿器科 |
平成23年4月 | 北上済生会病院泌尿器科 |
平成24年4月 | 岩手医科大学付属病院 |
平成26年4月 | ときわ会常磐病院 |
福島県のいわき市は東北地⽅の東南端に位置し、東の海岸線は南北60kmにも及びます。洋上の⿊潮の関係で、寒暖差が緩やかで晴天の日が多い、とても温暖な⼟地柄です。平安期より続く厚い歴史があり、中世には磐城平藩の街、近代には炭鉱の街、そして近年では震災復興の街としての存在感があります。東日本大震災では、地震のみならず、津波と福島第⼀原⼦⼒発電所に関連する二次災害に遭遇し、私たちは⼈、建物、ライフラインなど、想像を絶する甚⼤な被害を受ける事となりました。
そうした苦難を乗り越えつつある今も尚、私たち地域社会が抱える課題は山積しています。地方都市が抱える人口減少・世帯数増加・高齢化の進行の波、過疎化による中心市街地や産業の活力の低下は、速やかな打開が望まれる課題群です。昨今の新型コロナウイルスによる感染症被害におきましては、復興しかけていた街に途方もない打撃を加える事となっています。医療業界においても、震災後より進んでいた市の医師・看護師不足課題が更に加速をしています。
間違いなく、私たちは未来の行く末を決定する転換点に立っていると言えましょう。地域社会に生きる私たちが適度な連帯感を持ち、共にこの苦難を乗り越えようとする絶え間ない努力が必要な時だと思います。しかし、それは逆に言うなれば、そうした努力が行われるのだとしたら、私たちの未来は明るいという事でもあると思います。私の理念は「一所懸命」――鎌倉時代の武士に由来する、「全力を尽くして使命をまっとうする(=どのような困難にも絶え間ざる研鑽を尽くして道を守り、また切り拓く)」という考えです。
父・常盤峻士の理念は「一山一家」です。こちらはもともと炭鉱の街であった時代に生まれた言葉で、「鉱山に関わっている皆が家族同様の絆と連帯感を持ち、力強く前進しよう」という想いが込められています。私もまさにこの考えに同感であって、私の人生の指針のひとつとして確たる機能を果たしております。そのような未来に向けた前進の推進力になるものが、「一所懸命」にあるのではないかと、私は考えているのです。
「一所懸命」の言葉が明確に文献の中に登場している有名な逸話が、日本の南北朝時代を舞台とした『太平記』にあります。この巻十一では、「五大院右衛門宗繁」という武士の哀れな顛末が描かれています。鎌倉幕府滅亡後、北条一族は再建を賭けて、9歳の万寿殿(邦時)をこの宗繁に託します。万寿殿にとって宗繁は伯父に当たる人物。新田義貞軍の猛攻が迫る中、宗繁と邦時は隠れながら伊豆を目指すのです。
この時、宗繁の頭には次の考えがありました。「邦時を相手方に引き渡して、自分だけ助かろう、ついでに褒章を貰い受けよう」。そうして、彼は自分が仕えて来た北条を裏切り、船田入道という敵方の武将に邦時を明け渡してしまうのです。彼はこう言います。「私が一所懸命に守って来た土地を、これからもお守り下さいますよう、推挙をお願いしますよ」と。しかし当然、このような宗繁の選択には相応の報いが訪れます。彼は世間から「武士の風上にもおけぬ者」と評され、誰からも救いの手を差し伸べられず、最期は孤独に道端に倒れてしまうのです。
この故事の中の教訓として現代に語り継いでいる本質部分はとても明確です。それは、「誠実に一所懸命を尽くす大切さ」です。人は、使命を忘れ、何かに尽くすという事を忘れてしまった時に、大きく間違った道を歩んでしまうものです。決して初心を忘れず、真心を持って「一所懸命」にやり抜く事が、道を守り、そして切り拓く力になるのです。
現在、私たちときわ会グループは医療課題への打開策として、海外からの誠実かつ良質な人材を受け入れる、海外協力事業の積極的な推進を行っております。私たちは彼らもまた家族であると考え、共に成長と喜びを分かち合える幸せな関係性を築く事に注力しております。少子高齢化がもたらす厳しい未来を見据えながらも、この事業が「一山一家」かつ「一所懸命」の考えに基づいて花開くのであれば、その先にある世界は美しく温かなものになるであろう事を、私たちは確信をしております。