今回は、家庭でもできる「高齢者のお食事」について考えてみたいと思います。
人は誰でも加齢にともない変化していきますが、個人差が大きいのも事実です。
80歳を過ぎても自分の歯が20本以上あって、家族と同じものが自由に食べられる方もおられれば、軟らかいものしか食べられない…と、いう方もおられます。
そして、咀嚼障害や嚥下障害のある方…と、さまざまです。
高齢者では、食事の偏りや摂取量の不足がやせの原因になります。
加齢にともなう唾液分泌の低下や、味覚・臭覚の減退、消化管蠕動運動の低下などの身体的要因、脳血管障害後遺症による嚥下障害、うつなどの病的要因、独り暮らしや介護状況などの社会的要因などが複合的に関与し、食事量の減少につながります。
今回は
● 一般的な高齢者のお食事を状態に応じての展開
● 家庭で簡単にできる栄養たっぷりの一品料理
● 栄養補助食品の紹介
をご紹介致します。
高血圧の方も多いかと思い、減塩醤油を使用し、たんぱく質も過剰になり過ぎぬよう、魚・肉の数量に配慮しました。
主食 | ご飯 | 140g |
刺身 | マグロ | 30g |
タイ | 30g | |
大根 | 20g | |
減塩醤油 | 6g | |
(大葉・ワサビ) | ||
肉じゃが | じゃが芋 | 80g |
玉葱 | 30g | |
人参 | 20g | |
豚肩薄切り | 15g | |
みりん・砂糖 | 2g・3g | |
減塩醤油 | 8g | |
絹さや | 3g | |
茶碗蒸し | 卵 | 25g |
だし汁 | 100g | |
生椎茸 | 5g | |
カニかま | 5g | |
絹さや | 2g | |
減塩醤油・塩 | 1g・0.4g | |
お浸し | ほうれん草 | 60g |
減塩醤油 |
2g |
|
フルーツ | リンゴ | 100g |
※ エネルギー:588 kcal/たんぱく質:29.6g/食塩:2.0 g
主食をお粥にし、おかずは刻み食にしましたが個人の状態に合わせて一口大カット、粗刻み、超刻み…と、工夫してください。勿論、刻まずに食べられるなら結構なことです。
ご飯140g→お粥140g
リンゴ100g→砂糖10gを加えてコンポートへ主食の変更によりエネルギー量が大幅に減るため、フルーツをコンポートに代えてみましたが、やはり、普通食よりはエネルギーは不足のままです。
※ エネルギー:489kcal/たんぱく質:27.2 g/食塩 2.0 g
注意する点は、「誤嚥性肺炎」は凝集性の低いバラつきやすい食材だけでなく、単なるお茶やジュースでも起こり得る、ということです。
そのため、トロミ剤や片栗粉のようなもので粘度をつけたり、ゼラチンや寒天を使用して適度に固めたり…の工夫が必要となります。
この食事は流動化に伴う水分の増加で栄養量が落ちないよう、上記の粥をそのままミキサーにかけました。
粒々を残したい場合は、粥の一部をミキサー後に混ぜます。
刺身→ネギトロ用60gを利用しました。
飲み込みが悪いときは、お粥と一緒に摂取してみましょう。
煮物やお浸しも超刻み食あるいはすり潰しの状態にし、家庭で手軽にできる片栗粉でとろみをつけた「銀あん」をかけてみました。
だし汁で作れば更に美味しいと思います。
茶碗蒸しはきのこを除いて作りました。
コンポート→潰して軟らかめのゼリーにしました。
栄養量は銀あんの追加と、タイ→マグロの刺身の増量で以下の数値となりました。
※ エネルギー:489kcal/たんぱく質:27.2 g/食塩 2.0 g
ご飯 | 80g |
水 | 約220ml |
豚挽き肉 | 30g |
卵 |
50g |
人参 | 20g |
玉葱 | 20g |
ほうれん草 | 20g |
コンソメ | 3g |
ほうれん草は茹でて食べやすい長さに切っておく
豚挽き肉は水から煮てアクをとる
そこに、小さめに切った玉葱・人参・ご飯・コンソメを加えゆっくり煮る
仕上げにほうれん草と溶き卵を入れる
※ エネルギー301 kcal/たんぱく質14.7 g/食塩1.5 g
栄養量が不足気味と思われる方は手軽な嗜好品の利用をしてみましょう。
例えば、プリン、ヨーグルト、ムース、ゼリー、アイスクリームで、簡単にエネルギーは約100 kcal 前後摂れます。
じゃが芋 | 100g |
とりささ身 | 50g |
玉葱 | 30g |
コーンクリームスタイル |
30g |
牛乳 | 150g |
マーガリン | 10g |
ホイップクリーム | 20g |
塩 | 1g |
胡椒 | - |
じゃが芋、玉葱にひたひたの水を入れ軟らかくなるまで煮る
とりささ身を加え更に煮て、汁は捨てる
ミキサーに残りの材料と煮あがったものを入れ、粒々がなくなるまでミキサーをかけ、鍋で温める
※ エネルギー420 kcal/たんぱく質19.2 g/食塩1.6 g
市販の濃厚流動食が苦手な方にお勧めな一品です。
栄養量は濃厚流動食に匹敵するくらいあって、しかも作り方はいたって簡単、是非お試しください。
栄養補助食品の一部です。
通常の食事では栄養面が心配という方にぜひお勧めです。
市販の食品(おやつ的なもの)では、エネルギーは結構とりやすいのですが、たんぱく質がしっかり入ってバランスの良いものはなかなかありません。そこで、考えられたのが栄養補助食品です。
今はスーパーや薬局、インターネットなどで手軽に入手できます。
高齢者の方が、住みなれた自宅で健やかで豊かな生活を送るうえで、少しでも参考になれば幸いです。